5.やはり苦手でした

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一方白蛇は迷っていた。
ここは狗神に言われた通り素直に触るべきなのか、あまり近付かないようにしようと決めたことを守るべきか。触りたい気持ちもあるが、やはり昨日のような動悸は勘弁だ。あんなにドキドキしたのは初めてなのではないだろうか。

うんうんと唸っているといつになっても触れてこないのを疑問に思ったのか、狗神が自ら頭を差し出してきた。
そこで白蛇はやっと気が付く。



『………』

「たくさん愛玩してくださいませ」



可愛いという気持ちは芽生えたが、どんなに見つめていても胸の動悸がくることはなかった。そうと分かればとプニプニ素材の顔を触る。こひなの言う通り素晴らしい感触だ。
きっと昨日のドキドキはいきなり男性と密着したことによる一時的なものだったのだろうと片付けることにすると、少しだけ狗神への警戒心が薄くなった気がした。



―――


『こひなちゃん、神経衰弱しませんか?』

「白蛇さんは神経衰弱にすっかりはまってしまったみたいですね」

『神経衰弱楽しくて、つい』



一人でも遊べるということで暇なときやこひなが忙しそうなときにいつもしているのが神経衰弱。唯一の暇つぶしになり、一番の理由である楽しいゲームということで、今白蛇が熱中しているものである。
白蛇に付き合っているうちに自然と面白くなってきたのか、こひなもコックリさんに宿題!と怒鳴られないときは白蛇とよく遊んでいた。



「市松がカードをばらまきませう」



白蛇からトランプを受け取ると、裏返しにしてから言葉通りバッとカードを机上にばらまく。
机全体にカードを行き渡らせ準備が完了した。先攻は譲られたため白蛇となり、ゲームは始まったのだった。



―――


「二枚差で市松が負けてしまったのです…」

『最後こひなちゃんが間違えてなかったら私負けてましたよ…!だからどちらかと言えば引き分けですっ!』

「しかしこれは勝負なのです。つまり、結果として市松は負けたということになります。潔く負けを認めませう……」

「負けた奴の方がかっこいいってどういうことだ…!」



白蛇の勝ちで勝敗が決まり、途中料理の下準備が終わった後観戦していたコックリさんが突っ込んだことで神経衰弱は終了となった。
こひなはぼーっとする作業に。白蛇は片付けに。コックリさんは洗濯物を干しに、それぞれ自分の行動を取り始める。

白蛇が片付け終えるのとほぼ同時に、アニマル姿の狗神に声をかけられた。



「白蛇ちゃま〜、白蛇ちゃまのお名前はどう書くのでちゅか? おちえてくだちゃい」

『……え?』

「口調と共に声色を変える手の込んだ可愛さアピールなのです」

「もちろんこひなちゃまもお願いちまちゅ」



いつもの声色と明らかに違うことに驚いたが状況を理解すべく狗神を見た。

狗神が持っていたのは紙が二枚。もう一枚はこひなのものらしく、ご丁寧にここに書くと表示までされている。こひなからもらった名前を書き込めばいいのだろうか。白蛇は一緒に渡されたペンで紙に白蛇と書き込んだ。

(半ば脅して)こひなも書いたことを確認すると、それはそれは嬉しそうに紙を取ろうと小さい手を伸ばす。



「ん? なんだコレ」



だが、それは気になって現れたコックリさんにより阻まれた。
何やら紙が二枚重なっているという情報が耳に入る。するりと紙をずらすコックリさんの後ろへと移動して、こひなと共に確認する。

――婚姻届。霊界逝

白蛇とこひなは見てはいけないものを見た気がした。
その後、狗神はコックリさんにミキサーで挽き肉にされることとなる。




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