「家に招くことになったのは分かったけど、なまえはどうやって犬夜叉との距離を縮めるのか決めてるの?」
かごめちゃんに言われたこの台詞で、ハロウィンまであと二日だーやったーと浮かれていた私は現実に引き戻されることとなったのだった。
桔梗先輩に言われたことはクリアした。しかしどうやらまた新たにやらなければならないことが増えたらしい。
プランを立てずに距離を縮めよう!なんて出来るわけがなかった。
幼馴染みの私たちのことだ。いつも通りの接し方でいては仲良くプチパーティーをしてすぐお開きになるのは目に見えている。
「結局、なまえは犬夜叉とどういう関係になりたいの?」
そんなの……好き、なのだから考えずとも恋人同士になりたいに決まっている。
犬夜叉と幼馴染みなんて関係じゃなくて、もっともっと近い関係に。
そのためにイベントを利用して家に招いたのだから。
……でも、家に招いて私はどうするの?
ここにきて私の頭に過ったのは、断られたらどうすればいいかということだった。
「犬夜叉への思いが本気だっていうなら、ちゃんと自分の気持ちと向き合わなきゃ駄目よ」
ふふっと私を慰めるかのように声を上げるかごめちゃんに、もし……と続ける。
かごめちゃんは「うん?」と口角を上げたまま私の発言を待ってくれた。
もし断られたら私はどうすればいいかな。呟くようになってしまい聞こえたかどうか心配になったためチラリとかごめちゃんを盗み見る。
するとかごめちゃんはすうっと息を吸ってから――
「もうっ、何弱気になってんの!!」
思いきり怒鳴った。思わず後ずさりそうになったがなんとか堪える。
「その程度の気持ちだったんなら許さないからね!断わられると思ったら犬夜叉のことは諦めるの?」
諦める……? 例えば、本当に例えばだけど、犬夜叉に誰か好きな人がいたとしよう。
それが私だったらこの上なく嬉しいことはないけれど、他の人だったら。
私は、犬夜叉のことを諦められるだろうか。犬夜叉とその人のことを応援できるだろうか。
――出来ない。
「断られたら、より、自分と同じ気持ちでいたら嬉しいな、くらいのポジティブで本番に挑みなさい!」
頷いたあと、気付いた。かごめちゃんは全くもうっと腰に手をあて怒っているように思えたが、彼女なりにしんみりしそうになった私を励ましてくれたのだろう。
素晴らしい友達……親友を持ったものだ。
……いきなり怒鳴られたのにはびっくりしたけれども。
「んーそうねー。と言っても、距離を縮める……恋人同士になるにはすることは一つだけよね」
「え?」
「だって、断わられる以前に告白しなかったら返事なんて聞けないでしょ?」
二日前。犬夜叉に告白すると確認しました。
―――
「告白かあ……」
告白というものをしたことがない私は、今日は犬夜叉に何と伝えようか整理することにした。正確には、考えることにした。
告白。そう聞くだけで落ち着かない気分になる。
女の子が男の子への告白を決意しているときの気持ちと同じようなものなのか、経験のない私には分からないが同じものだと信じたい。
かごめちゃんに言われた通りポジティブに考えてみよう。
妄想のし過ぎかもしれないが、犬夜叉が私を好きだったとしたら何と言えば彼は困らないだろう。
私と付き合ってください。これからも私とずっと一緒にいてください。あなたの隣にいさせてください。
ネットで調べて出てくるのはシンプルなものだったり、とてつもなく甘いものだったり。
とてもじゃないが、私の口から出せるような言葉ではなかった。もちろん恥ずかしい言葉はいくつもある。
「……すき……」
だけど、この言葉なら言えそうだ。私の嘘偽りない……自分の気持ち。
当日がもっと楽しみになった私は、この日寝られますようにと初めて願ったのだった。