「ハッピーハロウィン!」
十月三十一日、どこもかしこもハロウィンムードで街に仮装する人やおばけカボチャが溢れるなか、私と犬夜叉は昨年出来なかったプチパーティーを行っていた。
というのもハロウィン当日、犬夜叉が高熱を出してしまい企画していた二人きりのハロウィンパーティーが中止になってしまったのだ。
必ず埋め合わせをすると言われてから一年。まさか約束を果たしてくれるとは。
あれからも犬夜叉が好きという気持ちは変わっていないため純粋に嬉しかった。
オレンジジュースの入っているグラスに口をつけていると「なあ」と犬夜叉に声をかけられる。
「どうかした?」
「これ、楽しいか?」
「え。何、楽しくなかった? ごめん……」
「俺じゃなくて、なまえがだよ」
「楽しいよ、すごく」微笑みかけると犬夜叉も安心したように笑った。
一年も待たせたことに罪悪感でも残っていたのだろうか。私はその日が楽しければそれでいいタイプなためあまり気にしなくてもいいのだけれど。
「犬夜叉は? 楽しい?」
「まだ満足の『ま』の字も出てきてねえぞ」
「よーしじゃあパーッと盛り上がろうか!」
「しゃーねーなー」
怠そうな言葉とは裏腹に楽しそうな表情をする犬夜叉に笑みがこぼれ、私と犬夜叉はプチパーティーを全力で楽しんだ。
―――
「それにしても、今年は熱が出なくてよかったね」
「そんな毎年この時期に熱出しててどうすんだよ」
「うん。仰る通りだ」
ただジュースとお菓子を二人きりで食べたり飲んだりするだけに終わったプチハロウィンパーティーの余韻に浸りながら犬夜叉と話をする。
そこでふと去年のことを思い出し、何気なしに問いかけてみた。
「……そういえば」
「あー?」
「去年犬夜叉のお見舞いに来たあと寝ちゃってたでしょ?」
「おう」
「詳しくは覚えてないけど、なーんか頬に妙な感触があった気がするんだよね」
途端、なぜか犬夜叉が勢いよくむせてしまった。
とりあえず苦しそうに息を整えようとする犬夜叉の背中を撫でながら、私は続ける。
「多分夢だろうけどやけにリアルだったから微妙に記憶に残ってるんだ。さっきまで忘れてたけど」
「…っ、お、思い出さなくてよかったけどな……」
「え? 何で?」
「……何でもねえ」
犬夜叉は落ち着いたのか小さく咳払いをする。
……ハロウィンパーティー、楽しかったな。いい思い出になった気がする。気がする……というより、実際いい思い出になった。
「犬夜叉、また来年もやりたいな」
「パーティーをか?」
「うん。……二人で」
少しの間のあと、俺もだという言葉が聞くことが出来て最高の思い出のままハロウィンを終えた。