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平和だな。

私が呟くとそれを聞き取った犬夜叉が「ああ?」と顔を私に向ける。
犬夜叉は本当に太陽がよく似合う男だ。
とりあえず目が合ったから微笑むと、少し困ったような表情を浮かべて私の方へと足を進めた。
そうして隣に来ると勢いよく座ったのが視界に入る。


「妖怪がいるのが当たり前のこの世界の、どこが平和なんだよ」


ふと視線を犬夜叉に向けてみれば、どこか遠くを眺めているように見えた。
きっと現代と比べて言っているのだろう。
確かに戦国の世であるこの時代と現代を比べてしまったら、現代の方が平和に決まっている。けれど。


「だって、私が危ない目にあったら、犬夜叉が守ってくれるでしょ」

「あ、当たりめえだろ」

「ん。だから平和だよ」

「……意味わかんねえ」


じっと見つめてくる犬夜叉の肩に寄り掛かる。
最初こそは驚いていたものの、しばらくすれば犬夜叉も静かに私の方へ少しだけ体重をかけた。

なんだか照れくさくて、つい顔が綻びる。
犬夜叉も照れているのか鼻の頭をかいているのに気付き、思わず小さく笑えば、犬夜叉は全く怖くない睨みをきかせた。


「怖くないよ」

「うっせ」

「安心する。犬夜叉の体温」

「……そりゃよかったな」

「うん。よかった」


ずっとこのままがいいな、なんて。我儘を言ったら、犬夜叉はどう思うのだろうか。
困るのだろうか。それとも、いつものように口ではいろいろ言いながらも私の手を握ってくれるのだろうか。
――まあ、どっちでもいいかな。


「私ね、隣に犬夜叉がいるだけで、すごくすごくうれしい気持ちになるの」

「っな、なんだよ急に」

「つまり、犬夜叉がいてくれることが、私にとっての平和なんだよ」


そこまで言えば、犬夜叉は言葉を詰まらせた。

私の平和は、犬夜叉がいてくれるからあるようなもの。
私から犬夜叉の手に自分の手を重ねれば、指と指が自然と絡まった。


「……なまえ」

「なあに?」

「おめえは……俺にとっての光だから。絶対、守ってやる」

「っ、うん」


ついいつもより大きな声で返事をしながら、顔を犬夜叉に向ける。

太陽の光が犬夜叉の綺麗な髪を照らしていた。
全く。本当に太陽がよく似合う男だ。惚れ直してしまったじゃないか。

これから先、私は犬夜叉以外絶対に愛せないな。
私は再度犬夜叉に寄り掛かり、ゆっくりと目を閉じた。


(20140605)



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