4 ふたご+ザマ+カン『夢味ミルク』
カンバー、オレン「」
カミン、ザマス『』
空調の効いた多目的室のソファーで微睡んでいたカンバーのリラクゼーションタイムは、うら若き双子の液状生命体達によって妨害されてしまった。あれほど自分を憎んでいたはずのふたりに左右から肩をつつかれ、何をされるかわからない緊迫感にすっかり目が覚めてしまう。
しかし当の本人達にそんなつもりは毛頭なく、まるで迷える子羊の如く困ったような顔をしていた。最も、表情の変化がわかりづらいためそんなこと彼には伝わっていなかったが。
『この前、朝早くから共用のキッチンに行ったら、ザマスがホットミルクを作ってくれたんだけど......』
「あのキラキラした甘〜いミルクの正体って何?」
何を言われるかと思えば。若干拍子抜けしながらも、そんなこと聞かれる筋合いはなかったカンバーはいつでも動き出せるようソファーの上で体勢をやや前屈みに変えた。
「何故それをオレに聞く......」
「いや、カンバーってザマスと仲良いじゃん」
それ自体を否定はせず、しかしどう考えてもハーツに聞いた方が早いだろう、という言葉を飲み込みながら少し考える。そういえば、光の加減で虹色に見える不思議なミルクをしばしば出されていた。味は確かに甘めのホットミルクのそれで、ザマス本人はそれを『夢の味がするだろう』と言っていた。
「オレも飲ませてもらったことがあるが、あれがなんなのかは知らん」
『「えー』」
「一つ思うことがあるとするなら......あいつはキラキラのカラフルなシリアルをこっそり隠し持ってるぞ」
双子は目を真ん丸に開いて見合わせた。
「えっ......あれってもしかしてザマスがシリアル食べた後のミルク......?」
『後で本人にも確認しようと思ってたけど......なんか聞くの怖くなってきちゃったな......』
知らない方が幸せだったかもしれない想定に顔を青ざめさせた二人は、用が終わったのかすごすごと部屋を出ていった。カンバーは再び穏やかな静寂に包まれる。
双子の気配が消えて少しすると、会話を聞いていたのだろう、どこか不機嫌そうにも見える顔をしたザマスがソファーの正面に回り込んできた。
『カンバー、いくらなんでもあの説明の仕方はないだろう』
「でもシリアルの件は事実だろう?」
堂々と答えると、周りを気にするように視線を巡らせたザマスは声を潜めて言った。
『なめられるからあまり広めてくれるな......』
そのままカンバーの隣に腰かけると、どこから取り出したのか小難しそうな本を読み始める。しかしまだ開きたてで目次のページを見ているらしいことを悟ったカンバーは、気になっていたことを控えめに尋ねた。
「結局あのミルクはどう作ってるんだ......?」
「特許製法だ」
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