3 ゴテザマ?



[たんぽぽと少年]

森に囲まれた小高い丘。ザマスはここで、静かに風に揺れる野花を愛でるのが大好きだった。元気の無い花には精を分け、必要ならば水を撒き、そして枯れた草を抜き取って肥として撒く。
野鼠が苺を運ぶ。鳥が歌う。人間のいないここは彼にとって楽園そのものだった。

ふと人間の気配を感じ、森の小道を見下ろす。黄色いヤマアラシのような生き物がこちらへ向かってくる。あれには見覚えがある。確か、あの親子の……

『ザマスお兄ちゃん!』

こちらに気付くなり、すいと浮かんで目の前までやってきた。屈託のない笑顔が眩しいが、一方ザマスは少し後ろ暗そうである。

「なんだ、人間……こんなところへ」

『ここ、ボクの友達がいるんだよねー』

そう言うと彼は辺りを見回してある場所を注視し、土から顔を覗かせたモグラのような、ヘビのような生き物を一撫で。懐いているらしい。

「……そうか。では私は失礼する」

『えっ、待ってよ!』

浮きかけた若草色の腕を掴む小さな手。ザマスは咄嗟にその手を振り払って構える。

『ちょっ、どうしたの!? 大丈夫?』

暫くの間ゴテンクスを睨んでいた彼だったが、そのあまりに真摯な態度にやがてふと肩の力を抜きながら、少し離れた所に降り立った。

「お前は私が怖くないのか」

その灰白色の瞳は疑念と少しの恐怖に染まっていた。翡翠の瞳は疑問の眼差し。

「……私ははっきり言って異形だ。お前達とは耳の形も、皮膚の色も、髪の色だって違う。」

メラニン色素をもつ人間達から遠ざけ、恐れられ続けてきた彼の差別への嫌悪がその心を冷たく閉ざしていた。それでもゴテンクスはわからないと言ったように首を傾げる。

『なんで? ザマスお兄ちゃん、たんぽぽみたいでキレイじゃん』

青い目線が下を向いた。そこには一株のタンポポ。
なんの理屈にもなっていない回答に、ザマスは呆れて脱力した。

『黄緑の茎と、あと白い髪の毛が綿毛みたい!』

寝そべって息をふきかける。綿毛は風に乗って空高く舞い上がった。




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