創世歴700年のある日、天に使う一柱の者が役目を終えて燃え果て、灰の中から四柱の天使とひとつの蛍火が生まれた。
一柱は豊穣を司る黄金色の天使
一柱は平和を司る空色の天使
一柱は愛を司る菫色の天使
一柱は安寧を司る夜色の天使
蛍火は天にさえ計り知れぬ力を持っていたが、生まれい出てからもずっと眠りについたまま、目覚めることはなかった。

忠実なる最初の一柱から生まれた四柱の天使達は、天の作りし人間達を健やかに育くみ、穏やかな空から見守っていた。



しかしそこから数百年の時が経ち、黄金色の天使は人間達を見下ろしながら守ることに疑問を抱いた。
豊穣を守るはずなのに、突然の嵐に対抗することができない。天からでは天の様子は見られない。
天使は更なる豊穣を約束して人間を守るため、地に降りて人間の世界に入った。
人間と共に天を見上げ、天を知り、そして嵐に備えることが出来た。

菫色の天使は人間には備わった愛が天使達にはないことに疑問を抱いた。
天使は仲間の天使達に愛を語り、そして天使自身も人間達を愛し愛された。

人間は天を知り、より身近なものとして受け入れようとしていた。



天は人間に近付かれることを促した二柱の天使を罰した。
黄金色の天使の翼を奪い、天に帰ることを禁じた。
菫色の天使の翼と衣を奪い、深い深い地の底に地獄を作って落とした。

空色の天使は嘆き悲しみ、自ら翼と衣を捨てて地に落ちていった。

人間は天を恐れ、天から遠ざかっていった。

天は最後の一柱となった夜色の天使から心を奪い、天から出ることを禁じた。
夜色の天使は心無きまま安寧を執行し続け、人間は光を浴びることが出来なくなった。
天を恐れた人間達は天から逃げ続け、自ら地獄へ落ちていくものもいた。
もう人間達は誰一人として天を見上げることはなくなった。

その時蛍火が目覚め、夜の安寧に包まれた世界を天から照らした。天は滅び、蛍火は最後に夜色の天使に宿って消えた。

蛍火の天使は世界を照らし続けた。天も、人間も、地獄も混ざりあった終わりの夜を。




おわり




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