4青伝ss
爽やかな風、日溜まり、木陰。草原と太陽の心地よい揺りかごの中、伝説は大樹の根本に背中を預けうとうとと夢をみたり醒めたりを繰り返していた。
「……隣、いいか?」
ふと瞼を開くと、本を小脇に抱えた青がそっと彼を見下ろしていた。眉をやや上げて表情だけ変化させると、青は意を汲んで彼の真横に腰かけ、そのまま本を開いて熟読し始めた。
ちらりと横目で見たそれがあまりに小難しかったので彼には内容がさっぱり分からず、とりあえず黙ったままでいることにした。
もう一度目を瞑って耳を澄ませてみると、遠くの方から3人の笑い声が聞こえる………
ピクニックをしようと言い出したのは誰だったろうか。よくも悪くも見晴らしのいいこの原っぱでは何ができるというのか。現状、黒達は楽しそうだが彼にはよくわからなかった。
若々しい緑の匂いと淀みのない空気が体に活力を与えてくれるようではあったが、それよりもこの状況は昼寝に適していた。荷物番だろうがかまわない。弁当箱を開けるその時までは。
「………こうして二人になるのも久々だな」
ふと、隣から呟きに似た問い掛けが聞こえた。目を瞑ったまま頷くと、重みのある温もりが腕にかかった。
視線だけをそちらに移すと青は本と瞼を閉じ、樹木と彼に体重を預けていた。木陰の外と内、隔離されたような錯覚も相まって、本当に二人きりのような心地になった。
………暫くすると、静かな安らかな寝息が聞こえ始めた。青がまだ幼かった頃、彼が父親の代わりに子守りをしていたのを思い出し、その体温に懐かしさを覚えた。
たまにはこういうのも悪くはないな。と伝説は笑んで、それから後を追うように夢の中へ落ちていった。
(兄さん達、寝てますね)
(丁度いい。オレ達で弁当食っちまおうぜ)
(待て、匂いでバレるから少し遠くに行こう)
(どこへ行くんだぁ………?)
おわり
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