私は、夢をみていました。昔から私は夢をみている時に、たまに自分は今、夢を みているんだと自覚する事がありました。この時もそうです。何故か私は地球の薄暗い駅に一人いました。ずいぶん陰気臭い夢だなぁと思いました。

すると急に駅に精気の無い男の人の声でアナウンスが流れました。 それは

「 まもなく……電車が参ります…………その電車に乗ると……血祭りにあげてやる………」 と意味不明なものでした。
まもなく駅に電車が入ってきました。
それは電車というより、よく惑星ベジータなどにある連結型ポッドのようなもので数人の顔色の悪いサイヤ人などが一列に座ってました。

私はどうも変な夢だなと思いつつも、自分の夢がどれだけ自分自身に恐怖心を与えられるか試してみたくなりその電車に乗る事に決めました。
本当に恐くて堪られなければ、目を覚ませばいいと思ったからです。私は自分が夢をみていると自覚している時に限って、自由に夢から覚める事が出来ました。


私は電車の前から26番目の席に座りました。辺りには生温かい空気が流れていて、 本当に夢なのかと疑うぐらいリアルな臨場感がありました。

「 出発……です…………」とアナウンスが流れ、電車は動き始めました。

これから何が起こるのだろうと私は不安と期待でどきどきしていました。電車は ホームを出るとすぐにトンネルに入りま した。黄緑がかった明かりがトンネルの中を怪しく照らしていました。

私は思いました。

(このトンネルの景色は、まだブロリーが子供の頃に占拠先の遊園地で乗った、スリラーカーの景色だ。 この電車だってサイヤ人電車だし結局過去の私の記憶にある映像を持ってきているだけでちっとも恐くなんかないな。)

とその時、またアナウンスが流れました。

「 次は岩盤浴………岩盤浴です……………」

岩盤浴?サウナの?などと考えていると、急に後ろから雄々しい咆哮が聞こえてきました。
振り向くと、電車の一番後ろに座っていたサイヤ人の頭を、赤い民族衣装のような物をまとった白目の男が掴んでいました。
よく見ると、男はそばから生えてきた青い岩に押し付けられ、岩盤浴のように沈んでいました。
強烈な気が辺りをつつみ、耳が痛くなるほどの迫力で男は岩盤にめりこみ続けました。
男の体からは凄まじいスピードで気が抜けていき、プロテクターや岩の破片が散らばっています。

私のすぐ後ろには涼しそうな服装をした顔色の悪い異星人が座っていましたが、彼はすぐ後で大騒ぎしているのに黙って前を向いたまま気にもとめていない様子でした。
私は流石に、想像を超える展開に驚き、本当にこれは夢なのかと思いはじめ恐くなりもう少し様子をみてから目を覚まそうと思いました。

気が付くと、一番後ろの席のサイヤ人はいなくなっていました。
しかし青黒い、石片と憎悪の固まりのようなものは残っていました。
後ろの異星人は相変わらず、無表情に一点をみつめていました。

「 次はサッカー……サッカーです…………」とアナウンスが流れました。

すると今度は双子のように外見のよく似た二人の男が現れ、金色の針の様な靴でうしろの異星人の体を蹴り飛ばして遊び始めました。
さっきまで、無表情だったその顔は、痛みの為ものすごい形相に変わり、私のすぐ後ろで鼓膜が破れるぐらい大きな声で十円をあげました。
口から紫色の汁が飛び出しています。血と草の匂いがたまりません。
私は恐くなり震えながら、前を向き体をかがめていました。ここらが潮時だと思いました。
これ以上付き合いきれません。しかも、順番からいくと次は後ろから3番目に座っている私の番です。
私は夢から 覚めようとしましたが、自分には一体どんなアナウンスが流れるのだろうと思い、それを確認してからその場から逃げる事にしました。

「次はお約束……お約束です……」とアナウンスが流れました。

最悪です。どうなるか、容易に想像が出来たので神経を集中させ、夢から覚めようとしました。

(気を沈めろ、沈めろ、沈めろ)

いつもはこう強く念じる 事で成功します。
急に「ウイーン」という機械の音が聞こえてきました。今度は最初の白目男が私の前に立ちよくあるポッドを近づけてきました。
たぶん私を閉じ込めるためだと思うと恐くなり、

(気を沈めろ、沈めろ、沈めろ)と目を固くつぶり一生懸命に念じました。

「 ウイーン 」という音がだんだんと大きくなってきて、顔に気の圧を感じ、もうだめだと思った瞬間に静かになりました。

なんとか、悪夢から抜け出す事ができました。全身汗でびしょびしょになっていて、目からは涙が流れていました。私は、寝床から台所に向かい、水を大量に飲んだところで、やっと落ち着いてきました。恐ろしくリアルだったけど所詮夢は夢なのだと自分に言い聞かせました。

次の日、開拓地で会う忠実な部下数人にこの夢の話をしました。でも皆は面白がるだけでした。所詮夢は夢だからです。



それから4年間が過ぎました。準備を整えた私はすっかりこの出来事を忘れグモリー彗星観察なんぞに勤しんでいました。
そしてある晩、急に始まったのです。

「 次はサッカー………サッカーです…………」

あの場面からでした。私はああ、あの夢かとすぐに思いだしました。
すると前回と全く同じで二人の男があの異星人の横腹を蹴り飛ばしています。
やばいと思い(気を沈めろ、沈めろ、沈めろ)とすぐに念じ始めました……………

今回はなかなか目が覚めません。

(気を沈めろ、沈めろ、沈めろ)…………

「次はお約束……お約束です………」

いよいよやばくなってきました。「 ウイーン 」と近づいてきます。

(気を沈めろ、沈めろ、沈めろ、これ以上気を高めるな)


ふっと静かになりました。
どうやら何とか逃げられたと思い、目をあけようとしたその時

「どこに行くんだぁ………おまえは逃げ続けるのか………」

と息子の声がはっきりと聞こえました。
目を開けるとやはり、もう夢からは完全に覚めており自分一人の部屋にいました。
最後に聞いたアナウンスは絶対に夢ではありません。現実の世界で確かに聞きました。私は息子に何をしたと言うのでしょうか?

それから、現在までまだあの夢は見ていませんが次に見た時にはきっと心臓病か何かで死ぬと覚悟しています。
こっちの世界では心臓病でも、あっちの世界はお約束です……………



おわり




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