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ラボから出て来た新人は、とてつもない恐怖と後悔の念、そして独特の倦怠感に襲われていた。
なんであんな事言ったんだろう…なんで断れなかったんだろう…確かに、薬を飲まされて思考が鈍っていたのかもしれない。でもなんで…あんなの…
手で扱かれるだけなら良かった。フェラをされてさせられて、キスの仕方も学ばせられた。どれも気持ちよかった。自分が自分で居られなくなる程に…
でも何故か、これ以上やってはいけない気がする。これ以上は何かとても恐ろしい事をされそうだと、直感でそう感じた。腹がそう言っている…
貰ったチョコバーを眺めながら思う。自分はなんて恥ずかしい事をされたのだ。今更怖くなってきた…
「…シンジィン?」
「うわっ!?帰ってきたんすか!?」
突然背後から声をかけてきたのは、紛れもなくリコだった。思わず抱きつくとその体はやや熱く、少し汗ばんでいる。整髪料とフルーツの匂いもしたが、その意味は新人にはまだ分からなかった。
「タダイマ!」
「おかえりー!」
久々の体温に心まで暖まるようだ…新人が腕を緩めるとリコはそっと抜け出し、愛する彼女にもただいまのハグ。基地中を見渡して隊長とコワルスキーが居ない事を確認すると、どこから入手したのか新しい切手を切手帳に入れていた。
「なんだかひさしぶりっすね」
「ウン…」
「どこ行ってたんすか?」
「ジュリアーン!」
ほう、と頷いた新人は切手を眺める彼の隣に座り込んで俯いた。そのまま膝を抱えて深いため息を吐く。
「…ドシタノ?」
新人は言おうか言わまいか迷った。果たしてこんな事リコに言っていいの?言ったところで何になるの?
…イライラしたような顔で"早くしろ何でも言え"と言う彼が妙に心強く、新人は思い切って口を開いた。
「あのねリコ…?…コワルスキーがボクに…その…すごくエッチなことしてきたんす…」
赤面しながら弱々しく言った新人の言葉を受け、リコは恐ろしい顔になったと思ったら申し訳なさそうな顔になった。
「…ゴメンチャイ…」
「…なんでリコが謝るんす…?」
答えを聞く間もなく、リコはラボに真っ直ぐ歩いて行く。怒り心頭と言った様子で、喉からは低い唸り声。乱暴に扉を開くと、これまた乱暴に閉めた。
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