「……治まらないか?」

 しかし銀色の瞳には多少の心配の色が宿っている。視線の先にあるものは未だに主張を続ける生殖器。ぬめって妖しく光る赤黒いそれは、彼の性的な興奮がいまも続いていることを示している。ブラックは情に濡れた目で見つめ返し、続きを期待するような顔を見せた。それに愛しくて仕方ないと言ったように眉を下げて笑うザマスは、体を少しずらして陰茎を真下に跨ぐようにして膝立つ。

「もっとよくしてやろう」

 そう言って下履きを消し、腰を突き出した彼の恥部には人間のメスの性器が発現していた。その官能的な魅力と性的なフェロモンにブラックの瞳孔は開ききり、屹立と肉欲をますます昂らせて細い腿に手をかける。それは他の誰でもないザマスが、人間の肉体に基づいた本能に寄り添った結果だった。目論見通り、欲望に忠実な肉茎は収まる場所を求めて真っ直ぐに勃起し力強く脈動していた。

「早く私が欲しいならば、おまえを受け入れられる身体にしてくれ……?」

 動物らしく、夢中になって己を求めんとする片割れに蠱惑的な笑みを向けると、内腿を辿っていた熱い手を取ってその中指を口に咥えた。唾液をたっぷりと含ませるように舌を何度も絡ませ、銀の糸を垂らしながら解放する。濡れ光る指は再び下半身を目指し、ぬるつく先端で柔らかな割れ目をつついた。そのまま力を込めるといとも簡単に飲み込まれ、熱い肉襞が手指の末端神経を刺激する。
 分泌液も手伝ってぬるりぬるりと内壁を掻き分けていけば、ブラックの胸に両手をついた彼は耳を横に倒して切なそうに長い吐息を漏らしている。そのまま奥まで差し込み、手のひら全体で陰部を揉みながら指では腹側の柔肉を優しく刺激してやると、彼はその細い腰を押し付けるようにして震え悶えた。

「よ、よくしろと言っているんじゃない……あっ……」

『こうした方が早く濡れるだろう』

 空いた片手がザマスの背中に添えられ、引き寄せるように力を込められる。その意図を悟った彼は先程性器を口でもてなした事について考慮し躊躇ったが、それでも続く優しい力に根負けし腕を曲げた。真っ直ぐな黒い双眸が眼前まで迫ったところで瞼を降ろし、そっと唇を重ねる。そのままどちらともなく舌を滑り込ませて深く口付けるまでには殆ど時間を要さなかった。舌先を擽りあい、口内粘膜を舐め犯し、吸い付いては愛を貪る。
 口淫、飲精を経たその口からは苦味と塩気を伴った自分の体液の香味がしたが、それはいまのブラックにとってはさして気になるものではなかった。唇では彼の口唇を、そして手では陰唇の感触を味わい、唾液の甘さを感じながら蜜の出処を探る。力強い舌に、震える腰に集中して楽しめばそれに伴って自らの体も高められていくようだ。

「っふ……わたしよ……そろそろ、ではないか……?」

 内部がすっかり熱く柔らかく溶けてきたことを体感的に悟ったらしい彼は唇を離して起き上がると、先走りをいくつも垂らしている陰茎をそっと掴んだ。期待するように喉仏を上下させたブラックは蜜を溢れさせながら指を引き抜き、二人の局部が触れ合う瞬間をいまかいまかと待ち構え凝視している。

『っは……! う……』

 ぷちゅ、という音が聞こえて先端が少し埋め込まれた。敏感な先端部分が媚肉に包まれる感覚にブラックの腰が浮く。それでもゆっくりと焦らすように腰を下ろして受け入れていくザマスは、体内を熱い楔に暴かれる感覚に吐息を震わせている。
 肉壺全体が呼吸に合わせて収縮し、それ自体が別の生き物かのように締め付けてくる。絡みつく肉ひだの一本一本が、ぬるつく柔らかい肉壁が、こんこんと溢れる体液が、それを構成する全てが彼を狂わせてならない。するとついに二人の腰が密着し、体内で震えていた男性器は膣の最奥を押し広げながら完全に包み込まれた。

「全て、入ったな……今回はどうだ……? 少し趣向を変えてみたんだ……っ」
 
 手指では届かなかった奥地は吸盤のような子宮口。滑らかな肉が亀頭にまとわりついて堪らない快楽を湧き上がらせる。細胞の一つ一つが吸い付き、一刻も早く子種を吐き出させてしまおうと激しくうねり狂って求めているように思えた。ブラックはあまりに強烈な快楽に歯を食いしばって堪えながら、勝手に動いてしまいそうになる腰を必死に止めている。

『そんなに、欲しがるなっ……っは、早く終わらせたくないっ……!』

「はあ……欲しがっているのはどっちだ……?」

 その最奥が雄を狂わせることを知っている彼は一度ギリギリまで引き抜いてから中程まで腰を下ろして再び浮かし、浅い抽挿でもってその望みを叶えてやることにした。それでも強い快楽に翻弄されおおよそ挿入している側とは思えない鼻にかかった声が漏れているが、少しは耐えられるようになったらしい。また、差し込む時よりも引き抜く時の方がより感じているようで、その感覚が堪らないのかザマスが腰を浮かすと彼も若干釣られて腰をくねらせているようだった。

『んんっ……いいぞ……最高だっ……』

 しばらくそうしていると余裕が出てきたのか、腰を振る相棒の尻を労り支えるように手を添えて薄い臀筋を揉みながら、腰を奥地に届かないギリギリまで下ろすように微調整している。ザマス自身も、熱く蕩けた膣壁を硬い肉棒で掻き分けられる快感を楽しむように角度を何度も変え、どこか余裕を持ちながらも快楽に酔う喘ぎ声はお互いの興奮を高める。
 ブラックに背中を引き寄せられるまま腕を折って四つん這いに近い姿勢になり、腰を波打たせるような動きに変えると深く口付けられる。熱く唾液に濡れた口内でも深く繋がり、口と口でセックスしているような感覚に囚われた。時折口を離して見つめ合えば肉体だけではなく精神も愛と快楽に溶けていく。

『はああっ、凄くいいぞっ……っわたしぃ……好きだっ……ああっ……』

「愛してるぞ、わたしよ……っくぁ……ふっ……」

 そのままザマスは肩に、ブラックは背中にそれぞれ手を掛けてじっと見つめ合っては何度となく舌を絡め、合間合間に情熱的に愛を囁いた。口内粘膜の擦れる感覚が、鼓膜を揺るがす淫猥な水音と愛の言葉が、互いの熱く汗ばんだ体がたまらない興奮を呼び起こす。
 早まっていく鼓動と動き、呼吸。体液が糸を引くほど湿り気を帯びたふたりの局部。蕩けた目で見つめ合えば心も繋がっていく。十分に興奮が高まったいまでは、膣はすっかり蕩けて陰茎の形をはっきり把握できるほどになっていた。

『はっ……わたしっ……わたし……っ……』

 相手の限界が近いことを悟ったザマスは、深く腰を下ろして恥骨同士を擦り付けるように体をうねらせる動きへ変える。忘れかけていた肉壺の吸引力にブラックは涎を垂らしながら腰を持ち上げて喘ぎ、汗ばむ全身を震え上がらせた。腰周りの筋肉に力が込められ引き締まり、脚は真っ直ぐに伸びて快楽の伝わる最短ルートが形成される。

『あああっ……だめだっ……もう出るっ、出る出る出る出る……ッ……〜〜〜っ……!』

 ガクガク、強く痙攣しながら先程にも負けぬ量の精液が勢いよく吐き出された。一滴も零さぬよう少し腰を上下させながら全てを受け止めたザマスは、体内で力強く震えているそれが愛おしいとでも言うように自らの下腹を優しく撫でながら、その追討ちとも言えるような快楽に震える相棒の首筋にキスを落とす。その刺激にさえ体を大袈裟に跳ねさせたブラックは息を荒らげながら視線を寄越し、なりふり構わないと言ったように細い腰を強く抱き寄せてその薄緑色の唇にかぶりついた。




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