ルーティンワークである動物達の世話を終わらせて一服した後、定刻通りに床に就いたブラックはどうにも体が疼いていつも通りに寝付くことができなかった。いつまでも眠れない彼を心配していたザマスが閉じていたカーテンを開くと、なるほど今夜は大きな山吹色の満月が輝いている。人間の、特にサイヤ人の体は月の満ち欠けに合わせるように種々のホルモンバランスや情動が変わり、暴力的な衝動や性的な欲求が高まってしまいがちであると知ったのはつい最近のことであった。

「……わたしよ、どうしたい?」

 あまりに選択肢が多すぎて回答に悩む質問であったので上体を起こしたまま答えかねていると、彼はベッドに腰かけてブラックの顔を覗き込んでくる。少しの間目を合わせていたが、困惑に揺れるその黒い瞳孔が開いて性的な興奮を示していることを読み取ると、布団を被れないでいた体をそっと押し倒して覆いかぶさった。

『……いいのか?』

「おまえを眠らせるのは私の使命だ」

『いつからそんな使命を持ったんだろうな……?』

 暗に欲を鎮めるためにもてなしてくれると言っている相棒への愛おしさを溢れさせながら、消せばいいものを、わざとらしく雰囲気を出すために寝間着を脱がせてくる細い手を取って口付けた。滑らかな手の甲の感触が唇に心地いい。お返しにとザマスの薄いインナーにも手をかけて前を開いてやる。それぞれ上だけを肌蹴させた状態でぴっとりと体を重ねれば、血の通った皮膚が直接触れ合う感触がえも言われぬ興奮と安堵をもたらした。

『っ、わたしよ……』

 思わずといった様子で顔を上げて目の前で薄く笑む唇に吸い付くと、それを嬉しそうに受け入れたザマスは誘われるがままに唇を押し付けて頭を枕に沈めさせながら舌を絡め、既に熱くなっている屈強な肩を控えめに掴む。ブラックはそれに煽られるがまま、細い腕を伝って肩、背中、腰へと手を滑らせていき、ついには服の裾に手を差し込んで脇腹から腰を直接撫でさすり始めた。熱く湿った掌が体表をなぞっていく感覚に身を捩らせながらも、舌を突き出し、吸い付き、粘膜を掻き混ぜてキスに集中する。

『んっ……ふ……』

「は……んっう……」

 熱くぬるついた舌が擦れ合う度、口内粘膜を剥がすように強く押し付けられる度、差し入れた舌を甘噛みされる度、頭が甘く痺れるような感覚と共に性器に熱が集まっていった。思い出したように動き始めたザマスの手が胸を滑って脇腹、そして下腹をくすぐり、衣服越しに硬度を持ち始めた陰茎を優しく撫でる。時を同じくして、ブラックの鼻から抜ける声が一層甘いものに変わっていった。

「ぷは……わたしよ、もっとよくしてやるからな……」

 やっと顔を離すと首筋に顔を埋め唇を這わせる。鎖骨から胸へ、乳首に一度吸い付き、肋骨から腹直筋をなぞって臍へ。下履きをずらすと半勃ちのそれが現れた。手に取って軽く扱けばそれはすぐに手を弾くほどに育ち、扱き上げるのに伴って透明な先走りを零す。
 期待に揺れる黒い瞳を見上げて煽るように陰茎に息を吹きかけると、顔を傾げるように寝かせて脈打つ裏筋にかぶりついた。口を開きつつ舌を添わせ、根元から先端に向け舌をちろちろ動かして擽りながら舐め上げていく。亀頭の裏側まで辿りつけば顔の角度を変え、正面から先端を口に含む。舌でこね回すようにして存分に揉みこんでやれば、熱く深いため息がザマスの耳を擽った。

『っはーー……いいぞ、わたしよ……っあ……』

 数度、喉奥まで深く咥え込むように頭を上下させた後、特に反応のいい先端部を攻めるため浅く咥え直して、根元には手を添えてゆるく扱き上げ、強くこすり下ろす。舌は亀頭の割れ目を尿道口を探るように動いたり、亀頭をぐるりと囲むように回して刺激した。唾液は水音が出る程舌先をしとどに濡らし、竿を伝って垂れていくそれは潤滑液にもなって根元を扱く手の滑りをよくした。
 ザマスはそれを舐めしゃぶる事に集中するように目を瞑って、かと思えば上目遣いで視線を寄越しながら見せつけるように男性器を咥え込む。舌を大胆に裏筋に這わせたかと思えば亀頭に軽く唇を当ててキスするだけになったりと、緩急をつけて刺激されればブラックはすっかり翻弄されてしまっていた。
 良い反応に任せて激しく首を上下させ吸い付き、お互いの体液をたっぷり含ませて音を立ててやれば彼は腰を押し付けて喘ぐ。手持ち無沙汰にシーツを掴んだり、しきりにザマスの肩や後頭部に触れて快楽を享受しようとしていた。

『んあ……そろそろっ……離せっ……』

 限界が近いのだろう、口内に放出してしまうことを危惧したブラックは腰を震わせながら余裕が無さそうに言い放つ。しかしザマスは動じることなく、むしろ一層に絶頂へ導く為の口淫を早めて汗ばむ太腿を愛おしそうに撫で上げた。自分を受け入れてくれることに多大な愛を感じときめきながら、その細い肩に手を添えて労わるように撫でる。すると一旦口を離して、

「っは……構わん、全て飲んでやる……安心して放てっ」

 と言ったきり、再び口に深く含むと熱くぬるつく舌の腹全体と喉奥を使って締め付けるような独特な動きに変える。その筋肉の脈動に根元から先端まで撫で上げられたためにあっという間に射精を促され、ブラックは腹の底から絞り出るような喘ぎを漏らした。

『ひう、くッ……で、でるっ……!』

 にわかに彼の全身に力が入り、そして短く高く喘ぎながら吐精した。直後の搾り取るような舌の動きに数度腰をうねらせ、ぶるりと震えながら余韻に打ちひしがれ、二、三度と浅く艶やかな息を吐く。どこか虚ろな目はぼんやりと白い前髪を見つめていた。

「ん、くっ、すごい……」

 紅茶以外にもコーヒーを愛飲する彼の精液は苦味ばしっており相当に濃いものであったが、それでも愛する片割れのものなら飲み下すことにさほど抵抗はなかった。ザマスは数度舌の上で白濁を転がして鼻に抜ける雄の匂いに背筋を粟立たせ、体を起こして上向いたままそれが喉をぬるりと落ちてゆく感覚まで楽しみながら嚥下する。黒い双眸が、そんな数度の喉仏の動きをじっと眺めていた。




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