現在俺は寝台に腰掛け、不味い飯を掻っ食らっている。体調不良は不自然な程感じられない。起きてから快便。寝小便も無し。頭痛も吐き気もなければ、寝起き特有の倦怠感も無い、すっきりとした目覚め。
 明日死ぬというのに……それを思い出したのは看守がこれを持ってきた時だった。全く、死ぬ間際という所で、なんと呑気な体か。独り呆れる。

 目の前の男は未だ眠りに就いたままだ。食事が終わる。手を合わせる事も無く、やや前方に重心を移動させ膝の間を覗き込むように俯く。

( ´_ゝ`)
 何も……覚えちゃいないんだがな…………

 覚えの無い殺人罪で拘束され期限付きになった価値の無い命。唯一記憶に残るはやや朧気な片割れとの思い出と、夢に出るあの女のーー

( ´_ゝ`)
 おん、な……?

 あんな知り合い、俺に居たのだろうか。この期に及んで、俺と何の接点があるというのか………頭をフル回転させ暫く唸ってはみたが、それらしい事は一切思い当たらない。

( ´_ゝ`)
 弟者なら覚えているだろうか……

 左斜め後方に自然と視線が移動する。鉛色の天井。溜め息。自分の頭を殴る。その痛みは、何よりも虚しく脳髄を揺さぶった。

(  _ゝ )
 ああ弟者、最後に一目逢いたかった……俺はお前に逢えようものならどんな事でも成し遂げてみせるのに…………



 ……一瞬の頭痛。直後慌ただしい一つの靴音が聞こえた。食器を片しに来たのか、と思い両手に抱え格子まで寄る。と、慌てて鍵を漁る看守の姿が迫り来る。

(;´∀`)
 も、モナァッ!

 こちらを見つめたまま鍵をカチャカチャやり、終いにはいくつかの鍵束を落としてしまう。状況がまるで読めない。まさかもう死刑の執行ーーー首にかかる縄や鋼鉄の椅子、何種類もの麻酔薬を想像し身震い。漸く目当ての鍵を見つけたらしい看守。格子が開く。

(;´∀`)
 さ、早く来るモナ! 早く!

(;´_ゝ`)
 のわっ! ななな……!

(;´∀`)そ
 モナッ!?

 看守に手を引かれる。食器の落ちる音。バランスが崩れる。離れる手。目の前に迫る、落ちた鍵束の先端。このままでは俺の眼球にーーー




………………………




………ぐしゃり……

…………ぐしゃり。


……ぼてぼてっ、ごろり。




:( < >< >):
 ァ…………っぁ……ァ……



:::;;:::+,'
 ッ……クク………あははははは……!



……ごりごり、ぶちゅん。



:(ll;><): そ
 いやああ……若林くん……が………そん……な…………



(u{;;{
……………ッグぇ!!



………どちゅ、どちゅ。




.,:::;:,;:' ゜
 はは……は………っぁはははははは!!! あははははははははは!!!!



ははははははははは!! っあーはははははははは!!!!はははは……はははははは……ははははは……は………ぁははっ……は……


は……………




………………………




(lll;´_ゝ`)そ
 ッ!?

 視界の中心に発光物質。右脇腹から肩にかけて他人の温もり。狂ったように高鳴る心臓。痛む頭。なんとか霞む世界を探る。電球の横に俺を抱きかかえるしょぼくれた男の顔、汗を拭う看守。

(´・ω・`)
 ……大丈夫かい? 良かった…………

(;´∀`)
 す………すみませんモナ。一時はどうなるかと…

 ……長い夢でも見ていたかのような感覚。何処か遠い意識。ふと、左手に何かがぶつかる。腕を辿った先は、血濡れの、2つのめだ……ま…………


(; _ゝ )そ
 ゥあッ!!?

(´・ω・`)そ
 どうしたんだい……っ?

(lll; _ゝ )
 ハアッ、はあっ、はっ……はあ……

 荒んだ呼吸を整える。再確認。正体は鍵束。何かがおかしい。俺は疲れているようだ。この一瞬で……一瞬?あの夢は長かった気がするが……

(;´_ゝ`)
 ……俺はどれ位気を失っていたんだ?

(;´∀`)
 モナ?君は、気絶してなんかないモナよ……?

(;´_ゝ`)
 …………そうか、

 何か長い夢を見た気がするのは何だったのだろう。あれが追憶というものか?だとすれば、俺のこの奇妙な事件を紐解く鍵だったやも知れんのに……やはりぼんやりとしか記憶に無いのが口惜しい。2人の少年の悲鳴と、気が違った男の笑い声…

(´・ω・`)
 ほ、本当に大丈夫なのかい?

(;´_ゝ`)
 ……ああ、! すまない、考え事を……

 ぼうっとしている様子を気にされ、申し訳ない気分になる。……しかし、この男は一体何者だ。俺は重犯罪を犯して明日死刑になる予定では無かったのか。

(´・ω・`)
 ……行こう

 男に手を引かれ、力の入らない体を起こした。看守が鍵束を拾い、偶然立った一本の鍵を見つめ首を傾げる。数拍置いて、こちらを振り返る。

( ´∀`)
 ……早くするモナ

 未だ意識が不明瞭で、半分男に縋り付くように廊下を歩く。横目で見た向かいの檻には何にも見当たらなかった。




………………………




 長い通路を歩いて辿り着いた先は、またもや灰色の世界。牢屋よりは広く明るく、小規模な事務室のような感じだ。……現在時刻を調べようと思ったが、時計も暦も無かった。

( ´∀`)
 ここに座るモナ。

 いくつか並んだ薄青の事務椅子に座らされる。目の前に置かれたのは珈琲。香ばしき湯気が登っている。やや熱い茶碗を掴み看守を見つめる。

( ´_ゝ`)
 ……いいのか?

( ´∀`)
 怪しいものは入れてないモナ。暫くショボンさんと待っててくれモナ。

 看守はこちらへ一礼し、来た方とは反対側の扉へ入って行った。隣の椅子にはショボンと呼ばれた男が腰掛け、珈琲を冷ます俺を見つめていた。

( ´_ゝ`)
 あ……あの……ショボン、さん、先程は有難う御座いました…………

(´・ω・`)
 気にしないで、まだ足りない程なのに……

 こちらを真っ直ぐ見つめどこか嬉しそうに言い放った。"まだ足りない"という言葉の意味を考える。……うっかり熱いままの珈琲を思い切り口に含んで。

(; _ゝ )そ
 うぶっ……!

 口内に灼熱の痛み。味蕾に刺さる苦味。篭もる熱を発散させようと舌を突き出し、驚きのあまり荒い息を零した。……これでは犬の形相だと、少しして気付く。

(´・ω・`)
 誘ってんのか?

(;´_ゝ`)
 ふぇっ!?

 何か聞こえた気がするが、それどころではない。全く猫舌というものは困ったものだ……やむなく茶碗を置き、低温火傷寸前の手を冷たい事務机に擦り付けた。

(;´_ゝ`)
 ああ……死ぬかと思った…………

(´・ω・`)
 その程度で死んでもらったら困るなあ

 低い声が木霊する。横目で見れば彼は頬杖を付き、俺の体を舐めるように観察している。まるでこれではーーー

(´・ω・`)
 その流し目もそそるね……

 ……予感は的中したかも知れない。体をやや引き気味にし、腕で全身を庇うようにして男と向き合う。………芸術作品か何かを見つめる視線が突き刺さる。

(;´_ゝ`)
 っ…あんたさっきから、……何者だ?

(´・ω・`)
 兄者の所有者さ

(;´_ゝ`)そ
 しょッ……!?

 俺が物であるかのような言い種、そしてそう言い放った獣のような目……鳥肌が立つ。
 ーーーしかし、所有物扱いは当然かも知れない。俺は死刑囚であって、人権など認められていないのだろうから………

( ´_ゝ`)
 ……俺で何をする気だ? お前とは面識もないぞ?

(´-ω-`)
 ……ふっ………

 何処か影を持った顔でーーまるで自身を嘲笑するかのように笑った。意図がまるで読めない。眉を潜め問う。

( ´_ゝ`)
 何だよ?

(´・ω・`)
 やっぱり……僕の事なんか忘れちゃってるよねえ………ってさ。

 頭を抱える。やはりさっぱり思い出せない。今のところ夢ですら会っていない筈だ。まともな記憶でも残っていればまだ思い出せたのだろうか……

(;´_ゝ`)
 違う、俺は何も覚えて………

(#´ ω `)
 ッ、アイツ……大丈夫だよ、兄者は悪くない。

 目覚めた以前の記憶が無いことを説明しようとした所、彼の声によって中断された。………俺が記憶を失ったのは、他者に……しかも彼の知り合いによるものだとでも言うのだろうか。

( ´_ゝ`)
 ……なあ、おま

( ´∀`)
 手続きが終わったモナ

(´・ω・`)
 ありがとう、

( ´_ゝ`)
 っ……はあ…………

 ……聞き出そうとした所、看守がやって来てまたも中断。程良く冷めた珈琲を一気に飲み干し、彼に促され立ち上がる。

( ´∀`)
 じゃあ、こっちから出れるモナよ。

 第三の扉が開く。どうやら裏口らしい。明るい外の冷たい空気が俺の体を撫でる。……この格好のままでいいのかと一瞬戸惑ったが、促されるまま外へ踏みだ




(lll; _ゝ )そ
 っグ! げ………………









……やっぱりスタンガンって凄いね……

…………モナ……







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