4
現在俺は寝台に腰掛け、不味い飯を掻っ食らっている。体調不良は不自然な程感じられない。起きてから快便。寝小便も無し。頭痛も吐き気もなければ、寝起き特有の倦怠感も無い、すっきりとした目覚め。
明日死ぬというのに……それを思い出したのは看守がこれを持ってきた時だった。全く、死ぬ間際という所で、なんと呑気な体か。独り呆れる。
目の前の男は未だ眠りに就いたままだ。食事が終わる。手を合わせる事も無く、やや前方に重心を移動させ膝の間を覗き込むように俯く。
( ´_ゝ`)
何も……覚えちゃいないんだがな…………
覚えの無い殺人罪で拘束され期限付きになった価値の無い命。唯一記憶に残るはやや朧気な片割れとの思い出と、夢に出るあの女のーー
( ´_ゝ`)
おん、な……?
あんな知り合い、俺に居たのだろうか。この期に及んで、俺と何の接点があるというのか………頭をフル回転させ暫く唸ってはみたが、それらしい事は一切思い当たらない。
( ´_ゝ`)
弟者なら覚えているだろうか……
左斜め後方に自然と視線が移動する。鉛色の天井。溜め息。自分の頭を殴る。その痛みは、何よりも虚しく脳髄を揺さぶった。
( _ゝ )
ああ弟者、最後に一目逢いたかった……俺はお前に逢えようものならどんな事でも成し遂げてみせるのに…………
……一瞬の頭痛。直後慌ただしい一つの靴音が聞こえた。食器を片しに来たのか、と思い両手に抱え格子まで寄る。と、慌てて鍵を漁る看守の姿が迫り来る。
(;´∀`)
も、モナァッ!
こちらを見つめたまま鍵をカチャカチャやり、終いにはいくつかの鍵束を落としてしまう。状況がまるで読めない。まさかもう死刑の執行ーーー首にかかる縄や鋼鉄の椅子、何種類もの麻酔薬を想像し身震い。漸く目当ての鍵を見つけたらしい看守。格子が開く。
(;´∀`)
さ、早く来るモナ! 早く!
(;´_ゝ`)
のわっ! ななな……!
(;´∀`)そ
モナッ!?
看守に手を引かれる。食器の落ちる音。バランスが崩れる。離れる手。目の前に迫る、落ちた鍵束の先端。このままでは俺の眼球にーーー
………………………
………ぐしゃり……
…………ぐしゃり。
……ぼてぼてっ、ごろり。
:( < >< >):
ァ…………っぁ……ァ……
:::;;:::+,'
ッ……クク………あははははは……!
……ごりごり、ぶちゅん。
:(ll;><): そ
いやああ……若林くん……が………そん……な…………
(u{;;{
……………ッグぇ!!
………どちゅ、どちゅ。
.,:::;:,;:' ゜
はは……は………っぁはははははは!!! あははははははははは!!!!
ははははははははは!! っあーはははははははは!!!!はははは……はははははは……ははははは……は………ぁははっ……は……
は……………
………………………
(lll;´_ゝ`)そ
ッ!?
視界の中心に発光物質。右脇腹から肩にかけて他人の温もり。狂ったように高鳴る心臓。痛む頭。なんとか霞む世界を探る。電球の横に俺を抱きかかえるしょぼくれた男の顔、汗を拭う看守。
(´・ω・`)
……大丈夫かい? 良かった…………
(;´∀`)
す………すみませんモナ。一時はどうなるかと…
……長い夢でも見ていたかのような感覚。何処か遠い意識。ふと、左手に何かがぶつかる。腕を辿った先は、血濡れの、2つのめだ……ま…………
(; _ゝ )そ
ゥあッ!!?
(´・ω・`)そ
どうしたんだい……っ?
(lll; _ゝ )
ハアッ、はあっ、はっ……はあ……
荒んだ呼吸を整える。再確認。正体は鍵束。何かがおかしい。俺は疲れているようだ。この一瞬で……一瞬?あの夢は長かった気がするが……
(;´_ゝ`)
……俺はどれ位気を失っていたんだ?
(;´∀`)
モナ?君は、気絶してなんかないモナよ……?
(;´_ゝ`)
…………そうか、
何か長い夢を見た気がするのは何だったのだろう。あれが追憶というものか?だとすれば、俺のこの奇妙な事件を紐解く鍵だったやも知れんのに……やはりぼんやりとしか記憶に無いのが口惜しい。2人の少年の悲鳴と、気が違った男の笑い声…
(´・ω・`)
ほ、本当に大丈夫なのかい?
(;´_ゝ`)
……ああ、! すまない、考え事を……
ぼうっとしている様子を気にされ、申し訳ない気分になる。……しかし、この男は一体何者だ。俺は重犯罪を犯して明日死刑になる予定では無かったのか。
(´・ω・`)
……行こう
男に手を引かれ、力の入らない体を起こした。看守が鍵束を拾い、偶然立った一本の鍵を見つめ首を傾げる。数拍置いて、こちらを振り返る。
( ´∀`)
……早くするモナ
未だ意識が不明瞭で、半分男に縋り付くように廊下を歩く。横目で見た向かいの檻には何にも見当たらなかった。
………………………
長い通路を歩いて辿り着いた先は、またもや灰色の世界。牢屋よりは広く明るく、小規模な事務室のような感じだ。……現在時刻を調べようと思ったが、時計も暦も無かった。
( ´∀`)
ここに座るモナ。
いくつか並んだ薄青の事務椅子に座らされる。目の前に置かれたのは珈琲。香ばしき湯気が登っている。やや熱い茶碗を掴み看守を見つめる。
( ´_ゝ`)
……いいのか?
( ´∀`)
怪しいものは入れてないモナ。暫くショボンさんと待っててくれモナ。
看守はこちらへ一礼し、来た方とは反対側の扉へ入って行った。隣の椅子にはショボンと呼ばれた男が腰掛け、珈琲を冷ます俺を見つめていた。
( ´_ゝ`)
あ……あの……ショボン、さん、先程は有難う御座いました…………
(´・ω・`)
気にしないで、まだ足りない程なのに……
こちらを真っ直ぐ見つめどこか嬉しそうに言い放った。"まだ足りない"という言葉の意味を考える。……うっかり熱いままの珈琲を思い切り口に含んで。
(; _ゝ )そ
うぶっ……!
口内に灼熱の痛み。味蕾に刺さる苦味。篭もる熱を発散させようと舌を突き出し、驚きのあまり荒い息を零した。……これでは犬の形相だと、少しして気付く。
(´・ω・`)
誘ってんのか?
(;´_ゝ`)
ふぇっ!?
何か聞こえた気がするが、それどころではない。全く猫舌というものは困ったものだ……やむなく茶碗を置き、低温火傷寸前の手を冷たい事務机に擦り付けた。
(;´_ゝ`)
ああ……死ぬかと思った…………
(´・ω・`)
その程度で死んでもらったら困るなあ
低い声が木霊する。横目で見れば彼は頬杖を付き、俺の体を舐めるように観察している。まるでこれではーーー
(´・ω・`)
その流し目もそそるね……
……予感は的中したかも知れない。体をやや引き気味にし、腕で全身を庇うようにして男と向き合う。………芸術作品か何かを見つめる視線が突き刺さる。
(;´_ゝ`)
っ…あんたさっきから、……何者だ?
(´・ω・`)
兄者の所有者さ
(;´_ゝ`)そ
しょッ……!?
俺が物であるかのような言い種、そしてそう言い放った獣のような目……鳥肌が立つ。
ーーーしかし、所有物扱いは当然かも知れない。俺は死刑囚であって、人権など認められていないのだろうから………
( ´_ゝ`)
……俺で何をする気だ? お前とは面識もないぞ?
(´-ω-`)
……ふっ………
何処か影を持った顔でーーまるで自身を嘲笑するかのように笑った。意図がまるで読めない。眉を潜め問う。
( ´_ゝ`)
何だよ?
(´・ω・`)
やっぱり……僕の事なんか忘れちゃってるよねえ………ってさ。
頭を抱える。やはりさっぱり思い出せない。今のところ夢ですら会っていない筈だ。まともな記憶でも残っていればまだ思い出せたのだろうか……
(;´_ゝ`)
違う、俺は何も覚えて………
(#´ ω `)
ッ、アイツ……大丈夫だよ、兄者は悪くない。
目覚めた以前の記憶が無いことを説明しようとした所、彼の声によって中断された。………俺が記憶を失ったのは、他者に……しかも彼の知り合いによるものだとでも言うのだろうか。
( ´_ゝ`)
……なあ、おま
( ´∀`)
手続きが終わったモナ
(´・ω・`)
ありがとう、
( ´_ゝ`)
っ……はあ…………
……聞き出そうとした所、看守がやって来てまたも中断。程良く冷めた珈琲を一気に飲み干し、彼に促され立ち上がる。
( ´∀`)
じゃあ、こっちから出れるモナよ。
第三の扉が開く。どうやら裏口らしい。明るい外の冷たい空気が俺の体を撫でる。……この格好のままでいいのかと一瞬戸惑ったが、促されるまま外へ踏みだ
(lll; _ゝ )そ
っグ! げ………………
……やっぱりスタンガンって凄いね……
…………モナ……
[ 20/26 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]