(; _ゝ )そ
 ッ!!

 何者かが、こちらを見つめていた。

:(; _ゝ ):
 な、な………

 跳ね起きて、辺りを見回す。柔らかい小さなベッドの上で上半身を起こして……
 部屋はとても狭く、壁も床も天井も、全てがクリーム色のクッションで構成され、天井の端、光る視線ーー

(;´_ゝ`)
 監視……カメラ……っ、う!

 途端、激しい吐き気。口を抑えて間もなく指の隙間から液状の汚物が漏れだす。身につけていたローブが汚れる。

:(; _ゝ ):
 かはっ、う、ううぅ……

 悪臭が部屋中を満たす。口内が粘着く。目脂で瞼は錆び付き、腹から股間にかけて濡れた不快感……今すぐここから逃げ出したかった。しかし俺の脚は僅か震えるのみ。目から涙が溢れる。喉奥から不可解な音が漏れる。


 ……第二陣。より固形物らしかった。同時に尿道も弛んだか、大量の失禁。もう訳も分からず泣いた。何故自分がこんな目に合わなければいけないのかーーー何も思い出せない。

:(lll;_ゝ;):
 あああ、なんで……なんで…………

 俺は流石兄者でーー双子の兄でーーまだ23でーー9月7日生まれでーー乙女座で………………

 基本的なプロフィール以外殆ど何も思い出せない。辛うじて弟の顔だけは思い出せたが、今は片割れの事よりも自分が何故ここにいるのかについて知りたい。黙ったままこちらを見下すカメラを睨みつける。

:(lll; _ゝ ):
 う…ぐ、また…げっ、ーーーー!

 散々吐き散らした胃袋に収まっていたとは思えない、握り拳大の茶色く柔らかい塊だった。股をぬたりと転がって股間で止まり、手で薙払えば壁にぶち当たって飛散した。息を整え、汚物まみれの手で胸をさする。当に嗅覚は麻痺した。味覚は相変わらず酸味を訴え続ける。耳からは己の喘ぎ声のみ。視界が霞むのは涙のためか。
 息が詰まって苦しい。胃酸で喉が痛む。瞼が重く腫れている。体は悴んで震え、あらゆる苦しみから心は押し潰されてしまいそうだ……俺は苦痛を訴える事しか能のない声帯から、あらんかぎりの声を振り絞って叫んだ。

(#;_ゝ;)
 助けてくれ……!! ここから……出してくれ……ッ!!



壁から吹き出す煙、僅かな苦痛、暗転ー




………………………




あにじゃ、あんたは………

おれから、………を奪った…………

ゆるさない、ゆるさない………

許さない……許さない…………許さないッ!!




………………………




:(  _ゝ ):
 ……う………ん……ん……………、?

 冷たい床の感覚に目が覚める。視界いっぱいに広がる、限り無く黒い灰色。縞模様のーーー鉛色の鉄格子の向こう、太った中年が一人……

 寝起きからか口内は粘着く。瞼も未だ重い。が、吐き気やむかつきは無い。意識も大分鮮明である。どこか爽快感さえ覚える。

( ´_ゝ`)
 ここは………

 起き上がり、辺りを見渡す。狭い部屋ーーいやしかし、あの部屋よりは広い。壁に刺さるように設置された鉄製の寝台の上には、向こうが透けそうな程薄い毛布と薄汚れた枕。部屋の隅には洋式便所が剥き出しで1つ。窓は無く、照明も見当たらない。それなのに何故こんなにもはっきりと全てが見えるのか、全く不思議なくらいだ。

( ´_ゝ`)
 ……おい、まさかお前……

 この部屋は、まるでーーー

( ´_ゝ`)
 監獄………

 俺も向かいの男も、身につけているものは薄い灰色のツナギのような質素なもののみ。格子に手をかけ、出来得る限り辺りを見渡す。無限に続くような長い通路の両側には、規則的に並ぶ牢屋……

(  ,_ゝ )
 はは、は……さっきから何か、悪い夢を見てるんだな、きっと…………

 再び寝転がって、乾いた笑いをあげてーーー夢で無いことは理解していたが、信じたくはなかった。何かが頭の中で他の全てを圧迫して隠し込んでいるように思い出せない、この違和感が何よりも恐ろしくて………



………どうしたんだ?


( ´_ゝ`) ?
 ……………………

(;´_ゝ`)そ
 ふわっ!?

 向かいの男の声だ。認識するまで時間を要した。男は人生を諦めた廃人のような濁った目をしていた。

( ^ω^)
 ついさっき目の前の檻が騒がしくなったと思ったら……意識がないままのお前が運ばれてきたんだ。まだ若いのにそんな………何があって?

(;´_ゝ`)
 っ……―? 、〜〜〜?

 意味の掴めない質問。鼻を鳴らして曖昧に答える。男は眉を潜め、顎に手を当て困ったように笑った。

( ^ω^)
 まさかお前、記憶がないだなんて……

(;´_ゝ`)
 そのまさか、だよ………

 男が絶句したのが目に見えた。何もした覚えがないのに、俺が大罪を犯してここにブチ込まれたことがさも当然であるかのようで……胸が悲しみで溢れていくのが他人事のように感じる。

( ^ω^)
 ……俺もよくは聞いちゃいないが、なんでも90の民間人を惨殺し、取り押さえようとしたサツ10人を返り討ちにして逃げた挙げ句出頭……

(;´_ゝ`)そ
 は!?そ、そんな訳ないだろ!! 俺はあの日……あの日………あの……日………?

( ^ω^)
 何も覚えちゃいないんだろ。

 そもそも今日が何月なのかさえ分からない。宥めるような男の声が妙に物悲しい。まるでこの世界でただ1人自分だけがこんな苦しい思いをしているかのような錯覚に陥る。視界が霞掛かる。目に映る全てのものが細かく震えだす。

:( ;_ゝ;):
 うっ……ううっ……なんでっ………おれ……なんもして、ないっ……の……に……!!

( ^ω^)
 ……その分だと記憶喪失だってバックレてる訳ではないらしいな

 当たり前だ!
 ……そう叫ぼうにも、今の俺にはそんな事言える権利も、言ったところで信じてもらえる自信も無かった。もう、いっそ殺してくれとさえ思う。


 ………次第に大きくなる足音に気が付き、顔をあげて格子に縋った。

( ´∀`)
 ……なんだキチガイ野郎

( ;_ゝ;)
 おっ……! れが! いったいなに……した、で、すか……!?

(#´∀`)
 お前に知る権利はっ……

 近付く男の腕がこちらに迫る。視界の隅でその手が襟首に掛かった現場を認めたところで、圧迫される苦しみが思考を停止させる。

( ;_ゝ;)そ
 うぐっ……! やめ……て…………

(;´∀`)そ
 モナ……!?

 その手から逃れようと力無く暴れたが、到底逃げるには叶わないーーといったところで今度は床に叩き付けられ、重力に脳が揺さぶられる。

(;´∀`)
 な……警察官の頭蓋骨を片手でかち割った人間の力とは思えないモナ………

( ;_ゝ;)そ
 はっ!?

 片手で頭蓋骨を……俄かには信じ難い己の罪状に、自分が本当に流石兄者であったかどうかさえも信じられなくなりつつあった。俯く。涙を拭うも意味は無し。

( ;_ゝ;)
 お……れはいったい、どう……なるん、ですか……

( ´∀`)
 特別に教えてやるモナ…………死刑。

( ;_ゝ;)そ
 しッ……!!?

( ´∀`)
 明後日、死刑執行モナ。



 もう何もかもどうでもよかった。記憶が無くても、俺が殺人鬼でも。力が抜けていく。冷たい床が液体で出来ているかのように、体が沈んで溶けていく。涙は頬の塩粒。涙鼻線は当に砕けた。後は覚えのない罪を償うのみか……


 ただ、最後に一目弟者に会いたかったのが、唯一の心残りだった。




………………………




 っ……そんな………! そんな男、俺は知らない……!!

―そんな訳がない……お前は……お前は…………

 違うっ……! 人違いだ! 大体からして、何故にそんな思い入れを……

―おまえが…………を誑かして!

 違う! 俺はそんな事していない! そんな名前聞いた事も……

―ふざけるなあにじゃアアァ!!




川# - )
 お前のせいでッ………!!!!






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