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( ・∀・)
( ・∀・)
なんか、不気味だな……死体は一体どこに…………
モララーが何気なくその文字に触れた時、その顔がさあっと青ざめていった。指を見る。彼は目を見開いた。
(;・∀・)そ
そんな……そんな…………
指は黒く濡れ、日記の文字は滲んでいた。モララーは驚き、日記を手に掴んだまま数歩後退り。本を踏んで転びそうになり、本棚に手を付いた。
(;・∀・)
まさか……まだ生きていると―――
視界の隅になにか大きなものが揺れていた。さびついたモーターのようにぎこちなく首を回すと、そこには二足歩行の怪物。怪物は体中がぶくぶく膨れ上がって歪な形をしており、目は変な方を向いて、妙な体勢で立っていた。手には古びた鞄。怪物はその鞄をモララーに手渡そうとしているようだ。
(;・∀・)
………っ!
(ll Д )そ
ばけものッッ!!!!
:{;。く_'゜ノ:
たのむ……これを…………
ボロボロの手が伸ばされる。爪は飛び出ていまにもはがれ落ちてしまいそうで、緑色の血管のようなものが幾筋も浮き出ておぞましい色味をしていた。力が入らないらしく、何度も滑り落ちそうになっては持ち直している。
:(;・∀・):
あ………あ……
:(;・∀・):
……ッ………!
:{;。く_'゜ノ:
っ……ぅ………ぉ"……
震えながら迷った結果モララーはその鞄をひったくるように奪い取り、慌てて机の方へ逃げ出した。怪物はガタガタと不安定なままその場で立ち竦んでいた。両目をなんとかモララーの方へ向け、掠れた呻き声をもらしている。
:{;。く_'゜ノ:
はや く……にげ、て…………
:(;・∀・):
っ……く………
怪物は俯き、喉の辺りから不可解な音を漏らしはじめた。モララーはそんな怪物の様子を伺いながら、逃げ道を必死で探していた。
怪物の横が各1m程空き、別の本棚と本棚の間に本の山があって、背後には窓。隙を見て横をすり抜けるか、本の山をかけずれば逃げられる。場合によっては、この二階の窓を叩き割って飛び降りれば。
試行錯誤していた彼は怪物の小さな悲鳴に気がついた。
:{;。く_'゜ノ:
にげ、………ェッ!
(;・∀・)そ
怪物の口から深緑色の液体がほとばしる。体中の皮膚はぶちぶちと音をたてて裂け、そこからも同じものが。それはゆっくりと、しかし床を汚染していきながら徐々に広がり、彼の逃走通路を確実に塞いでいった。
怪物は液の中に崩れ落ち、わけのわからない言葉を叫びながら大きく痙攣していた。
:{;。く_'゜ノ:
ぉゴッ!!っぶぐゥゥ……!!ギぎげ………ッ!
(ll・Д・)
なッ…なん…ッッ!!
ある程度広がって止まったかと思われた深緑の染みが、モララーに向かって広がって来る。まるで彼をその中に取り込もうとでもいうかのように…
(ll・∀・)
ひっ………ひ…………
:(; ∀ ):
ヒ……ヒィィィィッッッ!?うわああああああああっ!!!!!?
モララーは机の上、窓のギリギリまで追い詰められ、ついには窓ガラスを叩き割って飛び出した。ガラスの破片が体中に刺さり、地面に落ちた事で更に深部まで入ったが、彼はすでに痛みも忘れていた。怪物があの窓を越え自身に飛び付いてくるような気に捕らわれ、なんとか日記と鞄を掴んだまま這いずって逃げた。
館が拳に収まるほど小さくなるまで腰が抜けていたがようやくまともに立ち上がり、胸ポケットのコンパスで北北東を目指して走りだした。
:(; ∀ ):
かはッ……はッ……くふ………っ…………
:(;・∀・):
村に行けばっ、通信機が、あるはず、っ例えなくてもなんとか、街に、連絡して………この書類を、研究所にッ……
当初の目的は忘れていた。いつのまにか彼の頭では怪物に遭遇した恐怖より、未知の怪物の正体を知りたいという好奇心のほうが大部分をしめていた。
(;・∀・)
急げっ……これを暴けばっ、すごい発見だぞ……ッ!
***
彼は目当ての村にたどり着くとすぐ研究所に連絡を入れ、書類の解析を迅速に行った。同時進行で村の疫病も調査したが他地域の蚊が流入し媒介しただけの何の事はない病であった。
そして後に"緑色の怪物"の正体は敵国が極秘に開発した生物兵器であると判明。更なる暗号の解読と共に実験・研究を続け、後に発見者モララーは国からの表彰を受けるだろうとまで言われていた。
………モララーが無事研究所に帰還して約7ヶ月がたった。彼の恋人ペニサスは自身の研究室にこもりきりのモララーの助手として、資料とまだ公表していないあの日記帳とを見比べていた。
('、`*川
うーん……感染時の諸症状については大方纏まったけど、肝心な感染経路についてははっきりしていない………潜伏期間が人それぞれに見えるけど、一体何の差があるというのかしら
(-、-*川
それにあの人も……やりすぎよ。国からの援助金が出たからって
いままでほとんどの研究を自費で行っていたモララーは多額の援助金を得た事で、個人での研究から組織をもちいた大規模な研究まで発展させたのだ。従来と比べて研究はかなりはかどったが、今回は敵国の生物兵器という事で牛歩の進み具合である。
('、`*川
あの人も大分疲れてるみたいだし……そろそろ、伝えるべきかしら…
ペニサスはすこしうつむき、資料と日記にしおりを挟んでから立ち上がった。テーブルランプを消し、カーテンと窓を閉め、部屋の明かりも消す。そして彼女は、自分以外入室を許可されていない、こじんまりとした研究室に向かった。
('、`*川
入るわよ?
ノックの後ノブを回すと、縮こまってデスクに縋る小さな背中が見えた。そっと近付き覗きこむと、容器の中の黄色い歪な塊を観察しているようだった。
( ∀ )
多分……あれは生物兵器用に遺伝子操作された粘菌の一種だ。粘菌は餌を見つけると少しずつ動いていく。問題はどうやってあそこまで巨大化し、早く動けるようになったか………
( ・∀・)
これはモジホコリカビ、簡単にてに入ったよ。
尋ねるまでもなく語りだした恋人にすこしぎょっとし、すこしやつれた肩を抱いた。筋肉がわずかに強張るのを感じる。
('、`*川
あなた、頑張りすぎよ? ……体を壊す前に休んで。お願い……あなたが心配なの…………
( ・∀・)
駄目だ……急いで解明しなければ…………
('、`*川
なんでそんなに急ぐ必要があるの? 時間はいくらでもあるでしょ?
( ・∀・)
それは……!
( ∀ )゛
………っ……とにかく、急がないと…………
段々と小さくなっていく声。ペニサスを説得できる理由がないのだろう。悩むように頭を抱え、それから彼はしぼり出すように、補足的につぶやく。
( ・Д・)
いつ、敵国がこれを使うか分からないだろ………もし首都周辺にあれがばらまかれでもしたら、一瞬で全滅、だ。
('、` 川
これ以上何を言っても聞かないだろうと判断したペニサスは肩にキスを一つ落とし、名残惜しそうに彼から離れた。そしてノブに手をかけ、振り向いて名前を呼ぶ。彼は頭を抱えたまま、聞いてるよ、とだけ呟いた。
('、`*川
あのね、私………
彼女は自らの腹を撫で、照れくさそうに微笑んだ。
('、`*川
中にいるの………
モララーの肩がピクリと跳ねた。彼女はそんな彼の様子に気がつかないまま、幸せそうに続ける。
('、`*川
赤ちゃんがいるの……あなたの子よ…………
( ∀ )
('、`*川
ね、お腹の中に……確かにいるの………小さな命を感じるの…………
( ∀ )
ああ……ペニサス………ああ…………
頭を押さえていた手を離し、モララーは立ち上がった。ゆっくりと振り向いたその顔は、清々しさと悲しみをたたえた満面の笑顔だった。
( ^∀^)
俺もだよ
おわり
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[mokuji]
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