青年はベッドの上でただ天井を仰いでいた。まだ1日と経っていないというのに、恋人の死が悲しくなくなってきたのだ。彼は自分が恋人に捨てられたのだと思い込み、自分を守っていた。

(´<_` )
 へへ……約束をすっぽかすような女なんて、こっちから願い下げだね…………

 誰が殺したとか、何で殺したとか、もう彼はそういった次元でものを考えてはいなかった。いつしかそれは悲しみを通り越して憎しみの感情に変わり、彼は自分を捨てた悪女にどう償いをさせようかとばかり考えていた。

 …不意に、玄関の扉が開く音がする。兄が帰って来たのだ。ドタドタと大きい足音が近付いて来る。青年はベッドから起き上がり、特に何の感情も覚えずに兄の登場を待った。扉が勢いよく開く。

(u ;_ゝ;)
 おっ…弟者ァ…!

(´<_`;)
 はっ…?

 彼は血濡れの姿のまま泣きじゃくっていた。床に血を垂らしながら座り込み、体をガタガタと震わせながら子供のように声を上げて泣いた。

:(u ;_ゝ;):
 俺はもう駄目だ!! 死ぬんだ!! ツンに殺されるッ……まだ死にたくねえよお!!

 彼は先端が二股になった牛の角を握っていた。青年は自分の部屋がこれ以上汚されないように、真っ赤な兄を持ち上げてそのまま風呂に放り込んでしまった。


***


 助手はベッドの中で哀れな程震えていた。青年は博士を呼ぶだけ呼んで、明日も仕事だからと自身の寝室へ帰った。博士は毛布にくるまって姿を現さない助手の背中をさすり、彼が落ち着いてベッドから出て来るのを待っていた。

(;^ω^)
 大丈夫だお兄者! 大丈夫……

:(    ):
 お前なんか嫌いだ! 俺がこうなると分かっててやったんだろ!? 肉体の記憶を利用して、俺をツンにする為に……!

(;^ω^)
 僕がそんな事する訳ないお! いくら肉体の記憶があったって、兄者がそのままツンちゃんになってしまうなんて

:(    ):
 だったら重大な意識障害についてはどう説明する! 俺は気が付いたら血濡れで化け物の体を切り刻んでいたんだぞ! 記憶は一切残っていないのに!

(;^ω^)
 それはっ

:(    ):
 無理だろ!! 他にも時々……意識を失って……変な町に立ってたり……い……っ…………

 博士はすっかり困り果ててしまった。何を言えばいいのか全く分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。暫くは助手の啜り泣く声だけが部屋に響いていたが、やがてそれも聞こえなくなった。

(;^ω^)
 ……兄者?

(    )
 …………凄く怖いんだ………自分の体が自分の体じゃなくなっていく…………

(;^ω^)
 兄者…………

(    )
 俺……このまま死んじゃうんじゃないかな……そっくりそのままツンになって、流石兄者という人間じゃなくなって………

(;^ω^)
 弱気な事言うなお! 自分の意志と希望を強くもつ事は大事なんだお! きっと変化を止めてもとの姿に戻す方法があるはずで

ζ ;_ゝ;)ζ
 もうこんなになってるのに………?

 緩やかなウェーブを描いた髪は完全なプラチナブロンド。瞳は星空の青、肌質もきめ細やかな少女のそれで、何よりその裸体は全体的にやや丸みを帯びていた。少し鼻が高い事と股間の一物を除けば、その姿は誰がどう見ても少女にしか見えないだろう。

(;^ω^)
 お……お……なんて……事………

 博士はその姿に亡き恋人を重ね、やがて目の前の青年が本当に恋人であるようにしか見えなくなってしまった。それを悟った助手は泣き崩れた。恐怖と絶望に泣き叫んだ悲鳴も、紛う事なき少女のものであった。






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