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――ヒエエエエ!!!!
素っ頓狂な断末魔に驚き風呂場へ駆け付けると、鏡を見て腰を抜かした間抜けな姿がそこにはあった。兄は髪を洗うところだったようで、その手からはシャンプーが滴り落ちている。
(;´_ゝ`)
ここ、こ、こいつ! 誰だ!!
兄は鏡を指差し、濡れ鼠のまま弟の腿に縋り付いた。弟はそれを予測していたように溜め息を吐き、震える兄の手を優しく引き剥がした。
(´<_`;)
兄者……気づいてしまわれたか…………
(;´_ゝ`)
弟者っ! この現象は一体……!!
(´<_`;)
……兄者に、金髪が生え始めた。……それだけの事だよ………
兄は一際大きな悲鳴を上げ、鏡に映った金髪混じりの男を見つめていた。
***
研究所の書斎にて。助手は弟と共に、移植手術例やその結果、肉体の記憶についての資料を読み漁っていた。
(´<_` )
ふむ……臓器移植がきっかけで食の好みが変わってしまう例はよくあるようだ
( ´_ゝ`)
俺は……今、無性に甘い物が食べたくてしかたがない………
(´<_` )
ああ、確かツンは砂糖菓子の類が好物だったな
( ´_ゝ`)
これについても、当てはまるのか…………
彼は自分で症状を纏め、自分自身を研究対象として利用していた。どの資料にも健全な人間が異性の唇を移植した例は載っていなかったからだ。
( ´_ゝ`)
……なあ弟者、俺、最近になって変な癖とか出てないか?
(´<_` )
……いま。
( ´_ゝ`)
は?
(´<_` )
左手左手。
兄は無意識に、自身の金髪を指に巻き付けて弄んでいた。彼は無意識の症状についても書き込み、徐々に深刻化していく有り様に身震いした。
( ´_ゝ`)
やはり他人のモノを意味なく移植するのは危険だな……俺の体がツンに乗っ取られていく………唇に本人の記憶が残っているとしか言いようがない………
(´<_` )
それにそのスピードが異常だ……2週間で半分の体毛が入れ替わる症例なんか一つだってないぞ………
( ´_ゝ`)
何か……何かあるんだな、俺とツンの間、もしくはどちらか一方に……
血液検査の結果が出ていたのでそちらにも目を通したが、やはり何の異常も見受けられないままであった。
( ´_ゝ`)
俺の体に……何が起ころうとしているのか………
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