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ーーお前の知っている通り、俺には大切な妻子がいた。
可愛い嫁と俺によく似た元気な息子。
3年前までは、お前よりも遥かに幸せに暮らしていた。
『最近は魔族の誘拐事件が多いんだっけか?』
そうだ。その3年前。
魔族の誘拐事件が多発し、俺の住む町はとても物騒だった。
様々なニュースでも人間に誘拐され死体となって帰ってきたり、あるいはそのまま消息不明になったりと様々な事例が取り上げられていた。
俺はなんとしても妻子を守らねばと体を鍛え上げ、息子にも魔法の使い方をきっちり教え込んだ。
一見すれば完璧だった。大丈夫なハズだった。
『あなたの家が大変よ!!』
仕事帰りに近所の奴に教えて貰い駆け込んだ時には、既に遅すぎた。
ブーン。お前がみんなを誘拐した後だったんだ。
『畜生ッ!!』
俺は手がかりを探して様々な場所を駆け回ったが、ついに何も見つからなかった。
そして3ヶ月経った後、
お前等が散々虐待した後の嫁が、研究所から送りつけられて来た。
ーーーそれはもう酷い有り様だったさ。
俺でも思い付けない程の暴虐の限りを尽くしていた。
ボロ雑巾のようになって死体と化していた。
そして息子は、あれから3年経った今も帰って来ないーーー
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