ブーンは仕事に出向いた。
 魔力を使って新エネルギーを開発し、世界を豊かにするーーーそんな会社に勤めていた。
 同僚達に挨拶を済ませ地下の研究室に出向くと、9歳程の幼い人狼がカプセル内の溶液に沈められていた。

「魔力の抽出は順調かお?」

 ブーンはイスにかけると眼鏡を掛けた背の低い男:アサピーに話しかける。
 アサピーはマッドサイエンティストのように黒く笑いながら答える。

「この実験体は魔力がバカみたいにある……3年前からずっと抽出し続けているよ。………そろそろ頃合いかな」

 アサピーは装置のレバーを引いた。
 すると突然中の人狼が酷くもがき苦しみ出し、口から大量の泡が溢れる。
 間もなく溶液の中でぐったりと動かなくなり、小刻みに痙攣し始めた。

 魔力ーーー人狼を含む魔族達にとって命にも等しい力を、彼らはこんなに幼い子どもから無理やり吸い出しているというのだ。
 アサピーは子どもが死んでしまわない程度に加減しながら、一度にかなりの量の魔力を抽出していた。

「……今までの実験体はすぐに使いものにならなくなったが、これが一体あればまだ5年は保つと推測される。それまでにがっぽり儲けなければ」

 白目を向き生命活動を停止した数々の実験体を尻目に、落ち着き払った、しかし楽しそうな口調でアサピーはそう言った。
 ブーンもまた黒い笑みを浮かべながらビクビクと震える実験体を眺めていた。




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