('、`*川
 あの、流石さんは……

( ´_ゝ`)
 兄者でいい

('、`*川
 ………兄者さんは一体何の研究をされているんでしょうか…

 流石さんは突然棚に並べてあった小瓶の1つを取り、内容物を飲み干した。
 小瓶は不透明であったので内容物の正体は分からなかったが、流石さんの喉仏の動きはなんとなくぎこちなかった。
 空になった小瓶を目を細めながら撫で回し、無造作にポケットに突っ込む。
 そして軽く室内を見回してから、いかにもつまらなそうな顔を私に向けた。

( ´_ゝ`)
 理論と現実を比べる研究。

('、`*川
 理論と現実を比べる……?

 突然、流石さんは机に積んであった書類を乱暴に蹴散らした。
 バラバラと書類が落下して散らばる。散らばった紙は全てまっさらだった。
 山積みの書類の向こうには…

( ´_ゝ`)
 これ、何だと思う

('、`*川
 ……ハムスター………ですか?

(*´_ゝ`)
 御名答

 丸々と太ったハムスター達がケージの中をちょこちょこ歩き回っていた。
 少々テンションが高くなった様子の流石さんはそのうちの一匹を手のひらに乗せ、私の目の前にそっと動かす。
 ハムスターはアルビノなのか、純白の毛皮に真紅の輝く瞳を湛えていた。口がもこもこ動き、その潤った目で純粋な好奇心の視線を私に送ってきた。

(*´_ゝ`)
 どうだ、可愛いだろう?愛いだろう?

 流石さんは骨ばった白い指先で、ハムスターの額を優しく撫でた。
 相当人慣れしているのだろう、ハムスターは目を細めて愛を受けていた。

('、`*川
 可愛いですね。

(*´_ゝ`)
 だろう?では、少々持っていてくれ。

 流石さんに右手を引っ張られ、私の手のひらにハムスターが乗せられる。
 ずしり、と重く、ふわり、と温かく、もこり、と柔らかかった。
 私にハムスターを預けた流石さんはさっき自分で散らした書類をまた蹴散らして遠くに飛ばしてから、机の下に潜り込んで何やらごそごそやっている。
 暫くしてやっと立ち上がった流石さんは、小型の………ミキサー機を抱えていた。

('、`*;川
 あ、あの……まさか………

 ………嫌な予感がする。

(*´_ゝ`)
 さ、おいでえ………

 流石さんは私からハムスターを取り返し、ミキサー機の中にそっと入れた。
 ……何も知らない純真無垢なハムスターの腹の下には、鋭利なブレイド。
 ひよこをミキサーにかける研究は知っているが、ハムスターでこの実験が行われるのを見るのは初めてであった。

 私はミキサーの蓋が閉じられたのを認めると、流石さんの柔らかな笑顔に狂気を感じざるを得なかった。

(*´_ゝ`)
 さ、見ていてくれよ………

('_ `;川
 ………………

(  _ゝ )
 愛してる………

 スイッチの上に指が乗る。
 押される。
 圧される。
 おされる。
 回るブレイド。
 一瞬の掠れた悲鳴。
 硬い何かが砕ける音。
 柔らかい物が潰れる音。
 液体が器の表面に飛ぶ音。


 ………三十秒程、赤黒い液体が器の中を踊り狂う光景は続いた。
 骨も砕かれ余程滑らかになったそれを見つめ、流石さんは満足そうに笑った。
 蓋を取り外し、内容物をポケットに入れていた先程の小瓶に移し替える。

 ……先程飲んでいた物は、彼が……流石さんが愛していたハムスターだったもの………

(*´_ゝ`)
 ほら、あったかい………ハムスターだ。

('、`;川
 ………"だったもの"では……?

 どう見ても、"それ"はハムスターだと言える形状をしていなかった。
 言うなれば、腐ったトマトジュース………

( ´_ゝ`)
 ………それを確かめる研究をしているんだ

 急に真剣で真っ直ぐな目つきになったので驚いた。
 先程までの態度とは一変、流石さんは1人の研究者となっていた。

('、`;川
 確かめるも何も………それはハムスターとは言えないですよ、哺乳類なら誰を潰したってそんな形状になります。

( ´_ゝ`)
 だが………DNAも細胞も、間違いなくハムスターのものだ。ハムスターという存在の形状が変わっただけで、理論上は、これはハムスターだ。

('、`*川
 でも実際問題、これはハムスターではないです。只の肉塊です。あの形状で無ければ誰がどう見てもハムスターであるとは言えませんよ………

( ´_ゝ`)
 粘土で人を形成しても、それは人ではなく粘土だ。100パーセント土で出来たレンガは土であると言える。それと同じように、ハムスターをミキサーにかけて出来たこれはハムスターであると言える。

('、`*川
 それは―――





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