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薄ら白く染まった古びた小屋のドアノブがゆっくりと回る。
私は扉の前に立ち、小屋の中からこちらを覗く背の高い男に頭を下げた。
外気よりも冷たい視線を頭頂部に感じながら、冷えた指をそっと擦り合わせて指の感覚を補う。
ほう、と吐いた息は白く曇って赤色の空に散っていった。
( ´_ゝ`)
………お前がペニサスか
聞いて数秒、自分にものを尋ねられているのだと気がついた。
慌てて姿勢を直して肯定の意を示す。
こちらを見下ろす細い目が少し柔らかく光った。歓迎されているらしい。
私は目元だけ弛ませて返した。
彼はそ、と小屋の中に消えた。
('、`*川
あの、失礼します……
冷え切った半開きの扉に手をかけ、中を覗き覗き遠慮がちに開く。
………その時だった。
小屋の中から流れ出た空気が一瞬、私の動きを止めた。
体中に纏わりつくような嫌な空気、私を阻害するような空気。まるでこの世界に私はいらない、とでも言うかのような極閉鎖的且つ超個人的な空気………
入ってはいけない、今まであまり頼る事はなかった私の第六感がそう叫ぶ。
不気味な緊張感を覚えながら、自分を除外しようとする空気を鼻に吸った。
生暖かく鼻に纏わりつく空気……薬品の臭いが鼻を刺した。生物特有の生臭さや鉄臭さも少し混じっているようだ。
私は冷えた外気を中に入れないように直ぐに扉を閉めたが、それによってより部屋の重い臭いを強く感じた。
( ´_ゝ`)
………換気をした方が良かっただろうか
('、`*川
いえ、私もこういう空気には慣れていますので……
眉1つ動かさなかったつもりだったが、やはりバレてしまった。
嫌悪感を示したくはないので、直ぐに作り笑いでもってその場を凌ぐ。
男はそれを見ると、為になる話を聞いたかのようにコクコクと細かく頷いて部屋の奥の方へ入って行った。
私はその細長い背中を追って進む。所狭しと並べられた棚には大量の書類や薬瓶、よく分からない何かが入った小瓶や小動物の骨格標本が整列していた。
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