シュガー

※百合匂わせ注意

「不思議ね、なんにも喋れない人形さん。どこにも行けない人形さん。貴女は全く意味を成さない、ただそこにあるだけの人形、ガラクタ、役立たず。そんな人形がどうして私の部屋にあるのかしら?」
「……」
「そうね。私がそう命じたものね。『何も喋らないで、この部屋から一歩も出ずに、私の側で生きなさい』。私から私宛の手紙にそう書いてあったから」
「……」
「あの時は疑いもしないでその通りに命令したわ。だけどね、最近思うの。貴女は誰で、私はどうして貴女をおもちゃにしようと思ったのかしら。若からの命令でもない、私個人の行動。私が私の部屋に他人を置く、果たしてその価値が貴女にあったのかしら」
「……」
「ホビホビの能力。おもちゃになった人間は、誰も彼もに忘れられる。貴女もみんなに忘れられた。私でさえ、貴女のことは覚えてない。過去の私も、それは分かってたはずだわ。価値があったとして、その価値そのものを忘却したら、意味がないじゃない」
「……」
「…………ねぇ。それとも貴女を知ってる私は、それを知ってて貴女をおもちゃにしたの? 貴女を知らない私に、こうして貴女を任せたの? 貴女と私は女で、私は年を取れないから。許されない想いに耐えきれなくなっちゃって、でもずっと貴女のそばに居たくて。だったら貴女をおもちゃにしようって。そう、思ってしまったのかしら。貴女を知らない私なら、大丈夫だと、思って」
「……」
「……不思議ね、人形さん。私は本当に何も覚えていないの。貴女は話すこともできないから、私は貴女の名前すら知らない。だけど……不思議ね、人形さん。私、貴女のこと、とっても…………」


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