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『あちっ』
いたいのは、きらい。『まえ』のからだで、さんざんあじわったから。
『ちょっと火傷するくらいなのにさ!全然我慢できるのにさ!俺の身体のことは、俺が一番よく分かってるんだ』
でも、いたいよね。いたいって、つたわってたよ。
がまん、してたんだよね。
わたしも、わたしもがまんして、がんばってにっこりわらっていいこにしてたから。……だから、わかるよ。
『でも冬美も燈矢兄ボロボロなのちんぱい。やっ!』
だから、わかんないよ。
どうしてまだいたいことするの?
いたいよ。くるしいよ。きみがけがするの、みたくないよ。
ヒーローって、いたいことしてまでなりたいものなの?
『冬美ちゃんにはわかんねーよ!女の子にはわかんねンだ!もう行こっ冷奈ちゃん!』
『、ぁ……』
『ちんぱいちてんのに!!』
わかんない。わかんないよ。
いやっていったら、だめなの?しんぱいするのも、だめ……?おんなのこは、わかんない?
どうしてそんなめで、ふゆちゃんのこと、にらむの?
『……冷奈ちゃんなら……分かってくれるよね?』
わ、かんないよ…わかんない、けど……わたし……わからない、と。
いたいのは、きらい。
こわいことは、きらい。
きみがきずつくのは、すごくすごく、いやだ。
───でも、
『すぐ冷やしたら、治るかな……』
ひっしにひっしに、ふたをした。
いろんなりゆうをたくさんかんがえて。ぬりつぶして。めをふさいで。わすれて。それをなかったことにした。
みられたくなかった。しられたくなかった。ぜったいぜったい、つたわってほしくなかった。
『だからね、わたし。とうやくんとヒーローになりたいって気持ち、変わってないからね』
いっしょにひーろーに、なりたかった。
ひどいざいあくかんで、しにたかった。
だいすきだから、いたいこともがまんできた。
つぐなうために、しにたかった。
それはうそじゃない。ぜんぶうそじゃないの。
でも、わたし、わたし、ほんとはね、
「───きら、われたく……なかった、…っ」
火傷の心配よりも、お父さんとの仲直りよりも、
きみに嫌われて捨てられるのが、この世で一番、こわかった。