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そうして、ある日のことです。
男の子と女の子はその日もお気に入りの縁側で、仲良くお話しをしていました。

日が経つにつれ、女の子は男の子の瞳を見てお話しが出来る時間が増えていたのです。

女の子特有のゆったりとした空気の中、それでもかわいらしい声と笑顔は、男の子だけに向けられていました。

男の子はそれがとてもとても、嬉しくて。
ふんわりとした言葉を乗せる甘い花弁が、あんまりにも愛しく思ってしまって。

男の子はつい、まだお話ししているキラキラの瞳の女の子の唇へ、ふんわりそっと口付けました。



「…………、……、…………ぇ?」



何秒、経ったことでしょう。

男の子はなんだか気恥ずかしくなって、もう女の子の唇から離れたというのに、女の子はとってもとっても時間をかけて、一つ、二つ、と瞬きました。

そうして、ゆっくりゆっくり両手を唇へと持って行き。女の子はコテン、と小首を傾げました。


「ちゅう…………?」


『ちゅう』、なんて。なんてかわいらしい響きなのでしょう。女の子の拙い言葉に、男の子の小さな胸はきゅうっと締め付けられてしまいました。

うん、そう。ちゅうだよ、と。

男の子も女の子のかわいい言葉をそのまま繰り返します。
そうして、またもう一度と、女の子へちゅうをしようと、小さな身体を乗り出して───、


「……ぁ、……、だ、め……、」

「───は、?」


男の子はびっくりしてしまいました。

なぜって、だって。唇が触れるか触れないかの距離で、いきなり女の子が男の子との間に手を差し入れて、そうして後ろに身を引いたからです。

まるで、まるで。男の子から逃げるみたいで……。

初めての女の子からの『だめ』に、男の子はくりくりの大きな瞳をまあるくまあるく見開きました。


「なんで?まいにちたくさんしてるでしょ。れなちゃんも、ちゅう、すきだよね?」

「……ぇ……ぇ…、……?」


男の子の言葉に、今度は女の子がその瞳を溢れ落ちそうなほどに開く番です。

ゆったりとした空間は、二人のはてなで埋まっていきます。


だけれど、先に口を開いたのは、女の子の方でした。

とてもとても不思議そうに。とてもとても困ったように。女の子は口を、開きました。


「おくちのちゅうは……すきなひととじゃなきゃ、だめなんだよ……?」

「……、………ぇ、?」


それが、女の子からの初めての…………拒絶でした。



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