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「──から、───んだぞ、」
「───けど、───て……!」

ぬき足、さし足、しのび足…………なぁんて。

とうやくんに手を引かれて、二人でこっそりこっそり近付いた。明かりの点いたお部屋には、ぼぉっと影が並んでる。おかあさんと、えんでばー。

もう少しだけ近づいたら、とうやくんが言ってた通り、なんだかこしょこしょお話しちゅう。
こんなおそい時間に……それに、二人とも、えっと。ぜんぜん楽しそうに、お話していないみたいで。

なんでだろう。しんぞうが、ちくちくする。とうやくんの指をきゅっとした。

「───それでも、あの子たち……頑張ったんだよ……。二人でヒーローにって、言ったんでしょ?……あなたに見て、欲しいんだよ……」

とうやくんが立ちどまる。おかあさんの声が、はっきり聞こえた。……やっぱり、きょうのこと、お話しているみたい。

きゅっと、とうやくんが口をむすんで。もう一度、「しーっ」ってわたしに指を立てた。とうやくんの念押し。分かったって、うん、ってうなずいたら、とうやくんはほんのちょっとだけ笑ってくれた。

なんだか苦しそうなおかあさんの声と、疲れたようなえんでばーの声。

しんぞうが、ちくちくする。

「二人でヒーローは、難しいの?燈矢と冷奈で、」
「無理だ、超えられない……燈矢の体質の、根本的解決にならん」

 (───そんなことない!俺は我慢できる!)

びりびり、って。あたまの中が、ガンガンした。とうやくんがわたしの手を、ぎゅっとぎゅっと握って、すごくすごく、怒っちゃう。そっと、とうやくんを見上げたら、とうやくんは我慢するみたいに、歯を食いしばっていた。


どうして……どうしていっつも、えんでばーは。わたしのとうやくんに、ひどい事、言うんだろう。

むり、なんて。こえられない、なんて。そんなこと、ないのに。わたしのとうやくんが、一番すごいのに。


そう思って、うつむいた。わたしが、わたしが今日、うまくできなかったから……、もっと、もっと……うまくできてたら、そしたら、

そしたら──……、


「…………冷奈の『個性』に触れた時俺は…俺、は、」



───何故、アレらが"双子"で産まれてしまったのかと、惜しく思えて仕方なかった。



「………………ぇ、?」


えんでばーの言葉に、顔をあげる。

ふたご、ふたごにうまれたのが、おしい……くやしい……?

どうして?どうしてそんな話になるの?
だって、とうやくんとわたしは、『とくべつ』で、『うんめい』で……!

とってもすてきな、ふたごなんだよ……?


「あなた、なにを言って……、」
「アレは"一卵性"だぞ。元は一つの受精卵……本来アレは、一人の人間として産まれる、筈だった」

『 ひとつの受精卵…まぁたまごだね、そこから2人が産まれるのが一卵性双生児 』
『 一卵性双生児でもすっごく稀に男の子と女の子の組合せで産まれることがあって……これってすっごく運命じゃない? 』


ママの言葉を思いだした。

そう、そう、だよ。とうやくんとわたしは、『ひとつのたまご』から産まれた、とっても『とくべつ』ですっごく『うんめい』な、そんな……『ふたご』、で───……、


───あ、れ…………?


もともと…………ひと、り…………?


「燈矢の火力は俺以上だ。惜しむらくは、耐性がおまえのものを強く遺伝してしまったこと……、炎への耐性も、あの……強力な『氷結』も、全て───必要のない冷奈の方へと渡ってしまった」


たい、せい……ほのお、炎の、耐性…………。

とうやくんは火、つかうと、やけど、しちゃうから……だから、だから痛いのが、マシになりますようにって、わたしが、冷やさなきゃって…………、

とうやくんの炎にも、触ったこと、あって……。

だって、だって、はやく、早く冷やさなきゃって、思って…………、わたしは、やけど……一度も…したこと、なくて…………?

わたしが、ほのおの……たいせい……?

じゃあ……とうやくんのは…………?


「ね、ぇ、自分が今……何を言ってるのか、分かってるの……ッ!?」

『 なあ…… 生まれ変わったら何になりたい? 』


おにいちゃんの、声がする。

わたし、わたしあの時……なんて、答えたっけ……?

なんて、───なんて答えて、しまったのッ?!


「双子に……二つに分裂さえしなければ、あの受精卵は───炎と氷の因子に加え、その両方に耐性を持つ……完璧な理想個体になる、筈だった」

『 来世も人間になりたい、かな 』


───待っ、て……、

じゃあ、じゃあ、ほんとうは……、


とうやくんは、もともと、ひとりで、

そしたら、氷も、耐性も、とうやくん、の、もの、で……、

な、なのに……わた、しが……産まれた、から……?

願った……、……から……?

ほんとうは……ぜんぶ…、ぜんぶっ………、とうやくんの……ッ!!


「いっそ……冷奈は───、」


わたし、が…………ッ!!


「やめてよっ!それ以上、口に出さないで!そんな、そんなっ、悍ましくてっ、そんな……ッ残酷な、ことっ!!」



『 それってすっごく残酷じゃない?地獄じゃない? 』



マ、マ、ママ……それって、……わた、し……そん、な………わ、わたし、が……また、にんげんって、…だから、だから…わたし…、…ッ……とうや、くんの───ッ!!!





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