朝、いつもより少し早く目が覚めた。
寝起き特有の眩しさや気だるさなど全くない、とてもいい目覚めだったからいつもはお母さんに任せっきりのお弁当を自分で作ってみた。お母さん見たいにはできなかったけれど、私にしてはまあまあの出来だと思う。
「早起きは三文の徳。ちょっと早いけど、行ってきます」
まだ誰も起きていない午前5時30分。学校まで急いでも40分ほどかかる道を、今日は余裕をもってゆっくり歩く。
歩き始めて50分ほど経ち、もう少しで学校が見えてくるであろう場所まできた。ここまで来るのに、さすがにまだ朝早いからか、散歩をしているおじいちゃんくらいにしか会っていない。いつもなら気にしない町の風景などをゆっくり見るのは、何だか新鮮で楽しかった。
「あれ、もしかしてみょうじさん?」
「?…あ、菅原君おはよう。早いんだね」
「俺は部活があるからなー」
みょうじさんこそ早いけど今日何かあるべ?
と言った菅原君に「ちょっと早く目が覚めたから」と言うと一瞬きょとんとした後に「何か得した気分になるよな」と笑ってくれた。
菅原君とは去年から同じクラスで、席が隣になった時に仲良くしてくれて、それからたまに話をするようになった。所謂クラスメイトだ。
「あ、今日って13日?」
「うん。どうかしたの?」
「実は今日俺の誕生日なんだべ」
菅原君の言ったことが理解できずに数秒動きが止まってしまった。
今、菅原君は何て言った…?
「今日が誕生日?」
「そうだべ」
「た、誕生日おめでとう!でも私何も準備できてないよ…」
「ありがと。…んー、じゃあさ」
これから下の名前で呼び合うっていうのでもいいべ?
少し照れたように笑いながら言った菅原君…孝支君につられて私も真っ赤になった顔で頷いた。
しわになるまで愛してあげる
(孝支君が手を握りしめてズボンに皺を作っていたなんて、目の前しか見えていない私には気付かなかった)