「アタシ、そんな魅力あらへんの?」
 え? とボッスンが呟いた後、しばらく沈黙が続いた。
「何で」
「……なんとなく」
 だってキス止まりやないか、アタシ達──なんて。
 そんな台詞恥ずかしくて言えるか。
「ほら、付き合う前とあんま変わってへんな〜〜思て」
 とりあえずこんな感じでごまかしとこ。
 ていうか、誤魔化して伝わるのか?
 この鈍感男に。
「──俺、誓ったんだ」
 ボッスンは優しく、でも強く、ヒメコの手を握った。
「絶対ヒメコの嫌がることはしない」
 その手を緩め、ヒメコの細い腰に腕を回す。
「ずっとずっと、大事にしたいかから」
 ──ああ、そうか。
 コイツはコイツなりに、あたしのこと大事にしてくれてたんやな。
「でもな、大事にするのと手ぇ出さないのはちゃうねんぞ」
 ぎゅっと同じように抱き締め返す。
「……そんなことされたらブレーキ効かなくなるんですけど」
「アタシは別にかめへんよ」
 次の瞬間、ボッスンにゆっくりと押し倒されたヒメコの背中が冷たいフローリングの床にあたった。


もう誰も彼を止めることはできない





大人な小説を書いてみたかった。
大人……?

12.8.31






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