運命の赤い糸って、信じる?
『そもそもオレはオカルトが嫌いなのだが』
「オカルトじゃねーだろ」
『何を言ってるんだ』
 運命の赤い糸とは、いつか結ばれる男女は小指を見えない赤い糸で繋がっている、という言い伝えである。
 しかしそれは日本だけで、それが生まれた中国や東アジアの国々では足首を赤い糸、又は赤い縄で結ばれているということになっているらしい。
『見えない何かで足首を結ばれているだなんて、どこかのオカルトマニアが食いつきそうな話だ』
「結木さんはどっちかってっと学園七不思議とか幽霊とか、もうちょっとリアルな方じゃねーか?」
 しばらくスイッチは黙りこんだ。
『──まあ、あんな女の話なんか、どうでもいい』
 それより、と続けて、
『ボッスンはどうなんだ?』
「え」
 運命の赤い糸。
 信じるのか、信じないのか。
「昔は信じてなかったけど」
『では、今は信じていると』
 うーん、と唸りながら腕を組む。
「信じてる、って訳でもねぇんだよなぁ。あるような気もするし、ない気もするし……」
 その手を後ろにやり、天井を見つめた。
「ただ、上手い例えだとは思う」
 真っ直ぐ繋がっている男女もいれば、複雑に絡み合い、相手がわからない者もいる。
「そう考えたら面白くねぇか?」
 再び彼は黙りこむ。
 元々見えないものは信じない主義なので、反応は予想できていたが。
『もうひとつ面白い話を聞かせてやろう』
 それまで画面を凝視していたが、こちらに視線を向けた。
『運命の赤い糸に似ている西洋の言葉で、双子の炎というものがある』
 互いの魂に共通した使命や目的のために助けあうソウルメイトのことを指すらしい。
『ボッスンの場合、身体的な双子と精神的な双子がいるということになるな』
「それはちょっと違くねぇか」
 自分の顔が引きつっているのがわかる。
『まぁまぁ』
「何が!?」
『非科学的な話ではあるが、……ニヤニヤするな』
「ニヤニヤ!?」
 時々彼の言っていることがわからない。
 悶々とした気持ちを抑えようと昼休みクラスメイトからもらったチョコレートをポケットから取り出し、口に放り込む。
 小さな甘味が広がった。
「……寝る」
『では、俺もゲームをしようかな』
 誰も喋らなくなった部室で、リズミカルにキーボードを打つ音だけが響いた。


それは誰にもわからない





ボッスン、椿おめでとうっ!
でも誕生日なんて関係ない文だ。
「双子の炎」に関しては、かじっただけなので間違ってるかもしれません。
すみません。

12.11.11






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