* パステルカラーの正方形をテーブルに広げる。 隅と隅を合わせ指でなぞると、美しい二等辺三角形が浮かび上がった。 「すごいなぁ」 感嘆の声を上げるヒメコ。 「そうか?」 彼女は折り紙をやる度に同じ台詞を吐く。 確かに彼女は不器用すぎるが、これは誉められるほど「すごい」ことなのだろうか。 「すごいわ〜。どんな手しとるん」 「フツーの手だ。…てか折り紙くらい普通にできんだろ」 「アンタの普通がわかれへん」 ちょお見せろや、と身をのりだした。 抵抗したものの無理矢理手を掴まれる。 「……フツーやな」 「言ったじゃねーか」 しかし、彼女はその手をは離さない。 「なんか、ホネホネしとるな」 「骸骨みてーに言うな」 「そうゆう意味とちゃう」 器用やからもっと女子っぽいかと思った、──なんて。 「失礼な」 某クラスメイトのように唇を突き出す。 拗ねているのが伝わったのか、謝罪の言葉を小さく呟いた。 「オレの方が大きいんだぞ」 ほら、と手のひらを重ねる。 第一関節に届きそうで届かない彼女の指先。 「意外と小さいな」 「何が」 「お前の手」 掌を少し斜めにずらして指の間と間を密着させ、細いけど柔らかいそれを握りしめた。 じわじわと伝わってくる熱が心地好い。 「──あほっ」 ドン、と身体ごと突き放され、窓の縁に頭をぶつけた。 「いっ…てぇなぁ……。何だよいきなり」 「うっさいあほ! アホアホアホ!」 そんなに罵倒しなくてもいいのではないだろうか。 「元はヒメコから掴んできたのに」 「──このっ…鈍感!」 彼女は捨て台詞を吐いて部室を飛び出した。 「鈍感って……」 冷めてゆく手を見るとなんだか虚しくて、気を紛らわそうと畳に横になった。 ミルフイユの食べ方 そのままだと崩れてしまうよ 手の大きさどれくらい違うんだろう…? あんまり差無い気もするけど。 12.10.30 〇 |