* 制服に慣れると私服に悩む。 中学に上がった後ふと思った。 あれから五年経った今でも、それは変わらない。 今も鏡の前で一人ファッションショーをしていて、ベッドの上は服が散乱している。 「これは……ちょおシンプルすぎるな。こっちは……少女趣味か」 時計の長針が一周したにもかかわらず、決まらない。 「アカン、もう時間ない」 逆算すると、あと十分ほどで家を出なければならない。 「せや、雑誌……!」 一ヶ月前のものだったが、天気予報では寒くなるとのことだったので問題は無いだろう。 「えぇと」 ココアブラウンのミニスカートに白いレースのポンチョ。 ピンクのニット帽にいつものチョーカーを着ける。 「──よし、」 今日も可愛い。 鏡の中の自分にそう唱える。 「どんな顔するやろ」 頭に思い浮かんだのは真っ黒な癖毛でネコ目の男の顔だった。 何故、と疑問に思ったものの、時計の針を見てそれはすぐに消えた。 「時間っ」 小さなショルダーバックのヒモを片手で掴み、階段を駆け降りた。 秘密のおまじない かわいくなる魔法をかけるの 修学旅行の準備中に思いついたもの。 恋する女の子って、いいよね(突然)。 12.10.9 〇 |