数年ぶりに再会した友人と別れ、あとは帰るだけである。
「はーい! オレ景色見える方がいいー!」
「子供か! ……アタシも窓側がええなぁ」
「子供か!」
 漫才のような掛け合いは、一昨日の出来事が嘘のようだった。
「ん? アンタ窓側がええんかったんちゃうの」
 通路側の──窓側を確保したヒメコ隣の席に座ったボッスンを見つめる。
「別にどっちでもいいだろ」
 食うか? と差し出された棒状のチョコレート菓子をじゃあ二本、と受けとる。
「たまにはプリッツとか買うへんの」
「二本も貰っといてそりゃねぇだろ」
「じゃあアタシからも……ほい」
 ペロキャンを差し出す。
「初めて見る色の組み合わせだな……。何味だ?」
「きつねうどん味」
「御当地限定品か!」
 突き返される展開は読めていたが、持っている菓子がこれしかない。
「これに七味かけるとめちゃウマいんやで」
「いやいいよいらねーよむしろもっとポッキー貰ってください」
 項垂れているボッスンから更に二本頂く。
 その甘味に浸っていた時、ボッスンの携帯電話の着信音が聞こえた。
「スミちゃんからメールだぞ」
「アタシ宛てにか?」
 携帯電話を受け取り画面を見てみると、件名にヒメちゃんへ、と書いてある。
 何故わざわざ今送ってきたのか疑問に思いながら添付されていた画像のファイルを開くと、ボッスンを見つめている自分の写真が画面に出てきた。
「見んなボケ!」
「えぇ!? 何で?」
 誤解される。
 今すぐ消してしまおうかと削除を選択する直前で止めた。
 この鈍感男に気を使う必要はない。
「アタシはたこ焼きが好きなだけや」
 ボッスンに対して言ったのか、それとも自分に言い聞かせたのか、よく分からなかった。



「いいか、家に帰るまでが旅行だぞ! 寄り道したらダメだかんな!」
「小学校の遠足か!」
 言われなくても大丈夫です、とやや突っ放された。
「ったく人の善意を何だと思ってんだ」
 電車の扉が閉まり、彼女の姿が少しずつ遠退いていく。
 隣に座っていたスイッチは眉間にシワを寄せ、旅先で購入したスケッチブックにペンを走らせた。
 ──心配なのか?
 大きな白の上に浮かぶ黒い文字。
「心配っていうか……」
 平気そうな顔してたって、女の子なんだ。
「最初は変なことして思い出したりしないか不安だったけど」
 
「まぁ、大丈夫かな」
 スケッチブックを捲っている。
 ──そうだな。
 喋れるようなったらええね。
 スミちゃんにそう言われた時に書いていたページだ。
「帰ったら玄関で寝ちまいそーだぜ」
 冗談混じりのこの台詞に、スイッチは頷いてくれた。

バロメーター
これは、一時の気の迷い





ギャグなのかシリアスなのか微妙な感じになってしまい申し訳ありません……。
それにあまりリクエストに応えられてませんが……でも楽しく書かせていただきました!
タイトルも気に入ってます。
原作沿いのお話大好きです!
素敵なリクエストありがとうございました!

12.10.7






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