音也


「おとやんおとやん、あのねー」

ふと耳につけてたヘッドフォンを外して、ギターの練習をしている音也に声をかけた。

「ん、どうしたの?」

「さっき、クッキーの差し入れ貰ったんだけど、食べるー?」

ギターを弾く彼はキラキラと輝いていて、すっごく楽しそうだったから声をかけるのをためらったんだけど、これ以上待つと注いだ紅茶が冷めて美味しくなくなっちゃうからね。ほら、と箱を傾けて、可愛らしい形の(星の形やハートの形だ。ほんと可愛い)クッキー詰め合わせを見せる。

「マジで!?やったぁ!」

「手ぇ洗ってこいよー。トキヤも食うー?」

そのままクッキーに手を伸ばした音也の手をペちんと叩き、洗面台へ促す。むぅーとむくれながら手を洗っている間、ぐるりと椅子を回して後ろで読書中のトキヤにも声をかける。

本を開いたまま視線だけこちらに向けたトキヤは、誰からですか?と眉をひそめて尋ねる。

「じんぐーじ、」

「遠慮します」

「即答かい」

「どうせ貰ったはいいけど処理に困ったといった所でしょう」

「その言い方はないよー」

アイツが女の子に人気なのは分かるけど、さすがにそこまで行為を無下にはしないだろう。しかし、それなら誰から貰ったというのだ…?

「洗ってきた!もらうねっ」

「……え?ああはいはい、どうぞー」

音也の声に、私は考えるのをやめて箱を差し出す。ぱくりと一口でクッキーを食べた音也。感想を尋ねようとした瞬間、音也の顔が目に見えて青ざめていった。

「これ……う、あ」

「え、音也…?」

「なるほど、四ノ宮さん経由でレンに渡り、おすそわけと貴方に渡したわけですか」

よかった食べないで。とトキヤが呟く。よく見ると額に汗が浮いていた。

「お、おとやん!おとやんしっかりして!!」

トキヤ観察してる場合じゃない、と私は音也に駆け寄り、その身体を抱き起こす。うっすらと目を開けた音也は、私の頬に手を添えた。

「ねぇ……もう俺、ダメかも……」

「おとやん…うそ、そんなのヤだよ…」

「俺、短い人生だったけど、幸せだった。愛してるよ………」

ガクリ、と力が抜けて手が床につく。私は音也を強く抱きしめた。

「おとやん……おとやぁあああああああああああああああああん!」






「幼稚なコントしてないで早く起きなさい、音也。貴方もです、悪乗りしないように」

「「ほーい」」



――――――――――――
こんなオチ(^p^)
おそまつさま。




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