イベント発生の予感 「おはやっぷ〜!皆、今日もビシバシ勉強しましょうねー」 朝から元気な月宮センセは、スキップしそうな勢いで教室に入ってきた。ぴしっ、と私の前の席の七海が姿勢を正して小さく返事をする。 やる気満々の彼女を見て、微笑ましい気分になった。これから彼女はとてもすごい成長を見せる。その成長を間近で見られるのは幸せなことだ。 (…可愛い) 早速、モブでいないといけないだろう。という決心はグラグラと揺らいでいく。それをなけなしの理性で押しとどめると、教卓の月宮センセを眺めた。視線があってウインクが飛んでくる。なんか、嫌な予感がした。 「今日はねぇ…このクラスにとっても素敵なお話を持ってきたの!」 (もしかしてHAYATOかっ…!!!) ひく、と頬がひきつる私と対照的に、Aクラ名物信号機組を筆頭とするクラスメートは興味津々で身を乗り出す。 「実は――」 私は入学(トリップ)一週間目にして平凡のふた文字に泣く泣く別れを告げることとなった。 私の予想はあっさりと当たってしまい、Sクラアイドルコースから一人、Aクラアイドルコースからも一人、補佐でAクラ作曲家コースから二人、計四人で…人気絶頂アイドルHAYATOと学校紹介をやらかすことになったのだ。 それで、選ばれたのが……目があったからとかいう理由で私、そして七海の強い希望により、七海。アイドルコースはくじで決めた結果那月が勝利をもぎ取った。 ちなみにSクラでは翔ちゃんらしい。翔ちゃんに会えるというだけでとりあえず私の機嫌はなおった。現金だと思うけれど、翔ちゃんを愛しているのだからしょうがない。 本番は一週間後。今日は打ち合わせのために放課後、つまりこれから集まることとなった。なんで私が、と最初はぶちぶち文句を言ってたけど、そろそろ諦めもついた。大人しくこの状況を楽しむことにしよう。 「どもー。今来ましたー」 打ち合わせの場所に行くと、すでにその他のメンバーは集まっていた。一番最後らしくて、ちょっとだけ恥ずかしい。 「待ってたわよ〜、真白ちゃん!」 「はぁ、そうっすか」 「あーんもぅ、冷たいんだからっ」 「そんなことないですよー」 ウインクを飛ばしてくる月宮センセにから逃げるようにして七海の横に座った。ニコッと七海が微笑む。 「よろしくお願いしますね。えーと…速水さん?」 「うん。こちらこそよろしく、七海さん。あと私のことは真白でいいよ。どうもむず痒い」 「いいんですかっ!?」 「はいー、どうぞ」 「じゃあ、わ、私のことも春歌って呼んでほしいですっ…」 「ん、よろこんでー」 にへら、と笑うと七海はちょこんと頭を下げた。女子の友達、ゲット。ちらり、と那月や翔ちゃんに視線を移す。翔ちゃんが帽子を直してからこちらに手を振ってきた。 「さて、じゃあお互い自己紹介からはじめてね。どうぞ!」 「いやいや、どうぞって言われてもね…」 「オレサマは来栖翔!未来のスーパースターだっ!」 「僕は四ノ宮那月ですよぉ〜。よろしくね」 「わっ、わた、私は七海春歌ですっ!」 「…………速水、真白。よろしく」 皆ノリよく自己紹介をはじめるもので、私はしばしポカンとして……ため息混じりに名前を告げた。本当は嬉しいくせに、矜持が邪魔してはしゃげない自分が憎い。 誰しも、初めての人にはよく見られたいものですよ。 そして、ある程度の打ち合わせが終わって解散の流れになった。しめに七海が拳を握る。 「それじゃあ、頑張りましょうね!みなさん!」 「おう!」 「はい〜」 「…そだね」 「なんだー、お前、暗いぞ?」 翔ちゃんに指摘されて、目を見開く。緊張してる?と那月に聞かれ、小さく頷いた。 「なんていうか…こーゆー、仲間と一致団結!とか今まであんまなかったから…」 「?おまえ友達……あ、いやごめん」 「友達くらい居るよ!?だけど私田舎から来たからねぇ〜」 あはは、と頬をかくと翔ちゃんが立ち上がった。私の手をがしっと掴むと上下にふる。 「お前、せっかくだから俺たちと友達になろうぜ!」 「とっ、とと、友達!?来栖くんたちと!?」 「あーそれ賛成です」 「私も、真白ちゃんと友達になりたいです!」 三人に囲まれて、座ったままあたふたとしてると、月宮センセと視線があった。どこか嬉しそうに彼女、いや彼は頷く。 「青春ね。いい機会よ、友達は増やしておきなさいな」 「いいのかな、私なんかモブが……」 「もぶ?ってなんですか?」 「なんでもないの、気にしないで春歌。…この出会いに感謝を」 友達が出来ました!! (三人も) ―――――――――――― この話はアニメだったりゲームだったりが混じってます。 時間軸は気にしない方向で!いいっすねトリップ。 12.11.04 ← |