番外その3:セシルの気持ち、あのねのね。

「はぁ……」

オカシイです。最近、ため息しか出てきません。

ワタシはいつもの指定席、森のベンチの上で陽を浴びながら呟いた。眠たいです、でも…あと少し待てばあの子が来る。

たったった、と走ってくる音が聞こえた。いつもクールに、別段急いでないよという風を装っている彼女ですが、猫の聴力を舐めないでくださいね。ワタシには聞こえているのですよ。

「やっほー、セシル」

彼女は真白と言って、最初に会った時から、どこかワタシのことを知っているような感じがしました。ワタシをセシルという本当の名前で呼び、意味深な言葉を残していく。

「……みゃー」

「ふふん、今日も煮干を持ってきてやったぞ。食いたいか?」

「にゃお」

「くっ…可愛いな!ほら!おたべー」

ワタシの前に煮干を落とした真白は、ベンチに腰掛ける。ワタシが煮干を食べきったのを見ると、ワタシを膝の上に乗っける。

「……あーあ。どーしよう、なんかこの学校さぁ、クリパあるらしいんだよね。那月が乗り気でさー…こないだはドレス選んできたよ。だりぃ…」

チッ、とか、ケッ、とかとても…へんな音が聞こえますが、深くは気にしてはいけません。ワタシの喉を撫でながら、彼女はため息をついた。ああ、アナタもため息をつくのですか。

「……行っても暇なんだよなぁ。でも、行かないと怒られる……あ、やばい今日は予定詰まってるんだった!ごめんセシル、もっとゆっくり話したいけど、それはまた今度ね!」

立ち上がった彼女は、見上げるワタシをじっと見て、ニヤリと笑う。

「いい加減、本性出してもいいんだからね」

「…にー」

どうも、複雑です。



何言ってるの。バカじゃないの!?

そう言った彼女は酷く頬を赤らめていて…。そして動揺しているのが簡単に見て取れました。慌てて弁解する真白を見ていると、なんとなく察してしまいます。

トキヤのことが好きなのでは、と。

少しだけ胸の奥がズキリと疼いた。ワタシもそこまで鈍いやつではアリマセン。気がつけば彼女を好きになってしまったのか。

狂おしいほどの愛が身を包んだ。あぁ、抱きしめてしまいたい。ですが、アナタはトキヤのことが好きなのですよね。

…ふと、別の気配に気づいて、少しだけ意地悪をしてみたかった。スミマセン、でもワタシも男なもので。ちょっとだけ、悔しいのです。



一瞬だけの恋でした。

「はぁ…」

「どうしたーセシルー」

「…いえ。なぜワタシのところに来てるのかと思いまして」

「トキヤさんが仕事で忙しくて構ってくれないから!」

あはっ、と笑う彼女はワタシのベッドの上でぐでーんと寝転がっていて。叫びだしたい気分ですが流石ワタシです。我慢します。

「なんかいい曲のイメージないかなぁ…」

「ワタシに聞かないでください」

「セシル冷たい!ねえ私のこと嫌い!?そんなに鬱陶しい!?」

ぎゃー、と叫ぶ真白は、ピタリと行動停止した。いそいそと携帯を取り出すと、なんらか打ち始めた。

「…トキヤさんからメールきた。……うんうん、……やった!」

「どうかしましたか?」

「トキヤさんがオフとってきたみたいで、明後日は一緒に過ごせるって!やったぁああああ!」

「…トキヤの前ではそんなにデレないくせに」

「セシルキャラ変わってるよ……。ま、まぁ、ほら、好きな人の前だからなんつーか…ねぇ?」

セシルは大丈夫よー、と豪快に笑う。…そんな行動を見てもまだ胸がドキドキするのは、失恋してもしきれていない証拠なのでしょうか…………。恋というものはフクザツカイキ、ですね。


――――――――――――
無理やり終わらせた。セシルも淡い恋心っていう何かをしたかったけど、なんだか違う方向に……。セシルごめんよぉ!ダストで活躍させたげるからねー!

13.06.08






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