帰れると、さ

「ぴんぽんぱんぽーん、Aクラスの速水真白さーん、今すぐ学園長室にくるように!一分以内に来ないとダメダメなのよーそれじゃあかもん!」

「……ほわぁあああ!?」

午後の授業をぼんやりと、それなりに真剣に聞いていたらそんな放送が部屋中に響き渡った。あまりにも驚いて変な声を出してしまったじゃないか。

つかつかと先生が隣にやってきて、唐突にぽむ、と肩に手を置いた。いってらっしゃい。今すぐに。との先生の声に押されるように私は教室を飛び出す。なんで私呼び出されてんですか。文句言ってやる。

「どやあああ!ついたっ、ぜーはー」

「お、来たようでーす。ギリギリ45秒!許しましょう!」

「し、死ぬかと思った…」

私本当に頑張ったよ。バクバクいう心臓をおさえながら、すすめられたソファーに座る。呼吸が整ってきた頃、おもむろに早乙女は切り出した。

「YOUそろそろ帰れちゃうYO!」

「おお、本当っすか」

「ミーは嘘はつきましぇん!実はもう帰れることは帰れまーす」

「なるほどーそれで呼びつけたわけですねー…やめれ!」

授業中に呼び出されるとみんなに心配されるんだよ。教室出るときの七海の心配そうな目は忘れることはないだろう。

「それで、帰りますかー?」

「…んにゃ。私は一応、この早乙女学園の生徒。……今更一ノ瀬放り出して一人だけ帰るわけにはいかない。だから、卒業オーディションまで居座っちゃっていいっすかー?」

軽い口調で言うと、早乙女はゆったりと頷いた。

「さすが、我が校の生徒は優秀でーす!自覚がありますねー」

「ふふん、ついでにいうと自信もあります。一ノ瀬を優勝させてみせますよ。話は以上?」

「以上でっす!帰ってもオーケー!」

「はーい、お邪魔しやしたー」

ばいばーい、と手を振って学園長室を出る。丁度休み時間に入ったところで、ラッキーと思いながらのんびり歩いた。クラスに帰ると、七海がパタパタと駆け寄ってくる。

「真白ちゃん…何の話でしたか?」

「あ、春歌。えーっとね、もう帰れるけどどうするかって聞かれたから、オーディションまでは居るよって言っといた」

そう告げると、途端に七海はしゅんと肩を落とす。それを見て、自分の発言に問題があったことに気づいた。

「あの、その…えーっと…」

「いいんです。そうですよね、真白ちゃんも、自分の生きていた世界に帰りたいはずなのに…ワガママはいっちゃダメです!」

ぐっと拳を握る七海。強いな、と笑った。

「ここに居られるのは本当にあと少しなんだから、存分に楽しまないと!……といっても、一ノ瀬との練習で終わっちゃうけどね」

私だって寂しい。けど、笑って別れようと決めてるのだから…。七海の頭に手を置いた。

「よしよし、大丈夫、私たちはずっと友達だって」

「…っ〜〜〜〜、はい!」

「よっしゃ、じゃあ次の授業の準備しないと…。あれ、移動?」

「はい。あの、一緒に行きましょう!」

七海の誘いを受け、ちゃっちゃと準備を整えるとアイドルコースと別れて教室を移動した。


本当に、あと少しなのか……。


――――――――――――
七海を出したかった。
次はトキヤのターン!(多分!)
13.05.03






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