Aクラスの皆と 「以上が私に関する資料です。足りない部分はないと思いますが、他に質問があればすべて読み上げたあとにどうぞ」 「ご丁寧にありがとうございます」 「それと。ペアが決定してから速水君、君の曲を聞かせてもらいましたが……正直言ってあの程度の力を持つ人ならばこの学校に嫌というほどいます。それでは私の満足する歌を作ることができそうにありませんね」 「それはすみません。なにせAクラスなものですから。Sクラスの方とは感性が違うようで」 「そういう自虐的な発言も謹んでもらえますか?不愉快です」 ピキッ、と額に青筋が走るのがわかった。それでも貼り付けたような笑みをキープできてる私はすごいですね。今度ご褒美にケーキでも買おうかと思います。 怒涛の(?)パートナー決定の翌日。彼、一ノ瀬は昼休みに私の教室に来て言いたい放題言ってる様子。クラスメートの手前、ブチ切れることはできずに必死に沸点を上げている私でございます。 「それで、用事はこれだけですか?」 資料を軽く持ち上げて鋭い視線を投げかける。そうですね、とあっさり返されて一ノ瀬は踵を返しクラスへ戻ろうとした。 「ちょちょちょ、ちょい待って!」 「……なんですか」 「練習は、どうするつもりですか」 「私は忙しいのです。どうしても外せないバイトもあるので、練習に割く時間はほとんどありません。曲のラフでもできてから声をかけてくださいね」 聞けば聞くほどムカつく発言だ。それにしてもゲームの一ノ瀬はこんなに口が悪い、いや性格が悪かったか?もう少し程度は優しかった気がするのだが…。 いや待て私、なに奴に優しさなんて求めている。奴が優しいのは彼の友達と七海に対してだけでいいだろそっちの方が価値が上がる。 「……くっそ。すっごい曲つくってあっと驚かせてやる!!!」 「はいはい、わかったからお昼食べよ?」 「あ、友千香」 拳を握ってメラメラ燃えてた私の肩を叩いたのは、渋谷友千香。私の貴重な友人の一人です。七海関係で仲良くなりました。 それと。七海関係で仲良くなったのがあと二人。聖川真斗と一十木音也だ。最近では、ここに那月をくわえた六人で行動することが多い。 「そういえばさ、真白」 「んー?」 誰かの椅子を借りて、後ろの方に密集して集まった私たちは各々、昼食の準備をする。コンビニの袋をガサゴソ漁ってると、正面に座る渋谷に声をかけられた。 「あんた…いつも惣菜パンな気がするんだけどさ」 「あーそうね。私料理とか全然ダメで…家でもよく冷凍ものに頼ってたんスよ」 昼の定番、焼きそばパンを取り出すと手を拭くのもそこそこにパンにかじりついた。冷めきったパンと焼きそばが何となく切ない。 「それは…まことか?」 「ま、真斗さん?」 「そんなのダメですよ!身体壊しちゃいますっ!」 「は、春歌……?」 両サイドに座っていた聖川と七海が同時に立ち上がって、似たようなことをいう。びっくりしてパンから口を離した。空いている片手を七海にがっしりと掴まれて、至近距離で覗き込まれる。 「あの、おこがましいかもしれませんが……わた、私、真白ちゃんのためにお弁当作ってきます!毎日!」 「わぁ、すごーい…………って、えええええええ!?」 「無論、俺も手伝おう」 「真斗さんも何言ってんすかぁああああ!?」 突然のよくわからない宣言に、叫びながらツッコミを入れるも…何かに燃えている二人は気づいてくれない。いつの間にか七海の手はしっかりと聖川のそれと重なっていた。 「真白ちゃんは私の大切なお友達です!栄養不足で倒れるなんて…許せません!」 「いや、かれこれ数年その食生活で、」 「速水は俺たちの大切な友人だ。くっ…失うわけにはいかぬな」 「おーい、なんで死にそうな流れなんすかー」 「諦めなよ、聞いてないって」 一十木が私と同じ焼きそばパンをほおばりながら呟く。彼は結構日替わりで弁当だったりパンだったりするので聖川と七海の良くわからない判定には引っかかってないようだ。 「あはは、楽しそうですね〜。僕も作ってきまっしょうか?」 『それはやめて!!!』 私と渋谷、一十木が同時に叫ぶ。那月のデンジャラスクッキングの餌食にはなりたくない。遠くから見てるだけで十分ですうふふふふ。 「はぁ、どうしよう友千香……二人の好意は嬉しいんだけど」 「えーあたしに振るの……?」 「友千香しか居ないの。頼れるのが」 「ふーん。つかあんたら、学食の存在忘れてない?」 「………………あ」 翌日から、六人揃って学食通いになったことは言うまでもない。 ―――――――――――― 最初の会話が嘘のようだ。Aクラ楽しそうだなオイ。 …いいふーふの日だ。 12.11.22 ← |