再び、夜 「今晩は。オマエの命、あと5日。0時すぎたら4日だけど」 「だからその挨拶やめろって!!!」 「大丈夫、4日目の夜も知らせに来るから」 悲痛そうな悲鳴を聞き、四季は楽しそうに微笑んだ。その反応が好きなの。と言うとため息がもれる。 「…悪趣味」 「あははー。嬉しくねー」 「だろうな」 軽口を叩き終えると、四季は定位置となった椅子に座る。ほんとは窓に座りたいんだけどね。ともらした。 「なんで窓?」 「だって、死神っぽいじゃん」 「なんでこんなのが俺の迎えなんだろう」 「おい、遠慮なくなってきてるぞ」 「お前こそ、な」 今日はリンゴ。と手に握ったリンゴを皮もむかずに噛み付いた。ツヤツヤとしたリンゴの表面に、歯型がくっきりと残る。食べる?と差し出されたそれに、翔はいらないと首を振った。 「今日はさ、何時まで居てくれる?」 「なんだ、寂しがり屋め」 「もう!いいから答えてよ」 「そうだね。オマエの寝る時間も考えて、12時前にはおいとましよう」 「それだけ?」 寂しそうに見つめてくる翔に、四季は今はね、と返した。 「気が向いたら時間伸ばしてあげる」 「ほんっとう、分かんないヤツ」 「ありがとう、嬉しくないよ」 「知ってる」 時計を見ると10時。あと二時間いればいい方だ。気まぐれな死神は、ケタケタ笑う。翔はそれを見て、 「よく笑うよな」 四季は笑うのを止めて、まぁね。と返事。 「だって、辛気臭いの嫌でしょう。なら、笑ってるのが一番だ」 そう言ってまた四季は笑う。翔は初めてその笑顔を綺麗と思った。同時に、意外と気遣い出来るのか。と本人が聞けば立腹間違いなしのことも同時に思う。 「……そういや、落し物はどうなったんだ?」 話題を変えた翔に、そうだねぇ。と四季は顎に手を当てる。 「まったく見つからない…って感じ?本当、どこに落っこちたんだか。空から落としたからどこに行ったかわかんないって言ってたし、鎌を頼りに魂搜索中」 「どこらへんを探してるんだ?」 「今はヨーロッパ。スイスとか、イタリアとか。私はフランスを今探しているところ。街並み綺麗よ」 「……はぁ、そうか」 ぐったりとした翔の頭を撫でた。とたんに元気に翔は食ってかかる。 「お前は一日一回俺の頭を撫でないと気が済まないのかよ!」 その怒りをものともせず、わしゃわしゃと四季は頭を撫で続ける。幸せそうな顔を見てると、翔も何も言えなくなった。 「綺麗な金髪よね。……両親どっちか外国人?」 「いいや、日本人」 「じゃあ、なんで金髪…。瞳も空色だし」 「そこは突っ込んじゃいけない企業秘密ってもんだろ」 「じゃ、つっこまない」 頭から手を離すと、でもその髪は好き。と言った。翔は照れたのかそっぽを向きながら、はいはい。と頷いた。 それからしばし話をしていると、時計が0時を告げた。四季は立ち上がると、翔の肩を優しく押して布団に倒した。上からかけ布団をかぶせると、頬をつつく。 「また、今夜。…………おやすみ、いい夢を」 「……おやすみ」 「じゃね」 パチン。と指を鳴らすと………。そこから先は、お決まりの展開だった。 ―――――――――――― 魂落ちるの…? 12.07.20 |