そこでの行為


「おーい、新入りー、おっきろー」

「……おきて、る」

「うおっ、…なぁんだ、おまえ、起きてたんか」

少女を起こしにきた少年は、驚いたように口を開ける。布団に仰向けで寝転びながら、目だけぱっちりと開き少年を見た四季は、ひどくめんどくさそうに上半身を起こした。

「なまえ、なんだ、っけ」

「もー、昨日教えたじゃん!エイド・イーリオン。エイドでいいぜ」

「だった、ねぇ。わたし、は、」

「聞いた!確か、四季だったね」

「ん」

こっくり頷いた四季は、ようやく立ち上がってのっそりと布団をたたむ。そして、なに?というようにエイドを仰いだ。

「そうだった。あー!!急いで着替えて!昨日支給されたでしょ!?集合があるから急いでよっ」

「ふく……」

「はい、ここ!」

叫びながらエイドは服を投げる。そのエイドを、四季はじーっと見つめていた。

「な、に?」

「んーん。……君、髪、綺麗な色だね」

「…俺の髪が?綺麗?………んなこと言われたの、初めてなんだけど」

支給された服をもそもそと着ながら、そうなのー。と尋ねる。窓からのヒカリを受けて輝く金色の髪。空色の瞳。この国では滅多に見かけない色だな、と四季は思った。きっと、いたん、っていじめられもしたのかなぁ、とも。

四季よりいくつか上に見えるエイド。彼の右手にも、もちろんバラの文様が見える。

「だいじょぶ、きれい、よ」

「ありがと。……でもね、いいから早く着替えなさい!遅刻するっつってんだろーがぁああああ!!!」

「さけばなくても、きこえて、る。おわった」

「よし!……ってそれ後ろ前!!!着替え直し!!そんなカッコでいったら俺が怒られる!」

「だから、さけばなくて、も……んしょ、よい、しょ。できた」

「はい、おいで!」

元気だなぁ、と呟くと、誰がそうさせてると思ってんの。とエイドが笑いながら返す。ギリギリで部屋に滑り込むと、二人して息をつく。間に合ったぁ。とエイドがへたりこんだ。

「そんな、に?こわ、いの?」

「普通は優しい人なんだけどね…。遅刻とかそういう乱れには厳しいんだよ…あ、来た!」

「わ、あ。せぇ高いー」

「はい、皆さんおはようございます。今日もビシバシしごいていくので、必死に食らいついてくださいね」

「「はいっ!!」」

周りを見ると、男だったり、女だったり、結構いろいろいた。しかし、四季ほど幼い人間はいなかった。それを四季は特に疑問に思うことはない。ふぅん、と頷いた程度だった。

教官の言葉が終わると、エイドにとある場所に連れて行かれる。そこでエイドにここでの決まりを教えてもらった。


まず、新しく来た人間には、指南役の先輩が一人つくことになっており、先輩になる人間はいくら後輩を持ってもいいということ。しかし、後輩が、つまり四季が先輩とする人は一人だけ。

本来は入って数日人間を見てから、お互いに決め合うらしいのだが、エイドは一目見て四季を後輩に入れたいと言ったらしい。

次に、ここでは一年の剣の練習をした後に、一年間どこかに配属される。一年がすぎて戻ってきたら、また一年休んで次は前回の戦果が高い順に、好きな場所へ行くことができる。

「つま、り。すこしでも、あんぜんが、いいなら。たくさん、たお、す」

「そゆこと。まぁ、誰だって死にたくないからね」

あっさりと言ったエイドは、四季に木刀を持たせた。

「…これ、は?」

「木刀。最初から真剣は危険だからね」

「へいき、だよ?」

「怪我するから、だめです」

めっ、と兄貴風をふかせる彼に、少しだけ笑いがこみ上げてきた。べつに、悪いものではない。こんな風に四季に接してくれる人間がいることが、単純に嬉しかっただけだ。


ここで四季は、一年の修行を積むこととなった。


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レンが出ない(・ω・`)
13.03.25



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テーマ「人外ファンタジー」
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