異例の少女 少女は異例だった。まずは、その表情。感情を何もかも締め出したような、無表情が常であった。愉快な家族の中に生まれたのだが、一度もニコリとしたことがないのだ。 そして、次に。その突出した戦闘能力。教えたわけでもないのに、五つの頃には護身用などと言いナイフを所持していた。治安の悪い街で、一度襲われたことがあったが、相手を殺さぬ程度に切りつけたほど。体格差など関係ないようであった。 笑わない、異常な戦闘能力を持つ少女。 少女は、恐れられていた。それでも、家族は少女を手放すことはなかった。幸せな家庭に育ったことは間違いない。それだけは、少女もわかっていた。いつも、申し訳ないというように指で眉尻を下げる。その度に母や父は静かにその頭を撫でるのだった。 右手の文様に目を落とし、少女はまた眉尻を指で下げる。母はその少女を抱きしめた。 「いいの。いいのよ………。渡したくないの、だけど……」 「いい、よ。わたし、は。ここで、しあわせ、だった」 ぎこちなく話す少女に、母は目を閉じる。 「この子は、まだ十なのに」 「お国のためだ」 「っ………。こんな国……」 少女は、男に連れて行かれる。何度も振り返りながらも少女は、その力には抵抗できなかった。 少女が地平線へと消えて、ようやく男は母に突きつけていたナイフを離す。協力感謝する、という一言と共に、金貨の詰まった袋が投げつけられた。 母は、それを気丈にも投げ返す。 「いりません。娘を返して」 「それはならぬ。…娘を思うのならば、受け取っておけ」 「こんな………こんなもの……」 崩れ落ちた母を振り返ることなく、男は消えた。 ―――――――――――― ……?なにしたいんだろ。 13.03.12 |