序章 其の王国、エレジス。そこではとある騎士団があった。 薔薇の騎士団<ナイト・オブ・ザ・ローズ>それは魔の物に襲われる危険にさらされているエレジスを守るための騎士団。正義を貫く、エレジスの誇りである。 と、いうものは表向きの話。その薔薇の騎士団は、ある特殊な人間で構成されていた。共通しているのは、右手に薔薇の文様があること。 この国では、しばしば右手に薔薇の文様をもつ人間が生まれてくることがある。その人間は、破魔の剣を使うことによって、人ではない怪物を殺めることができるのだ。 エレジスは、怪物に悩まされている。そのため、文様があれば男だろうが女だろうが、剣を持たされあちこちに連れて行かれる。本人の意思なんて関係ない。薔薇の騎士団など、崇高な名前がつけられているが、なんてことはない、ただの寄せ集めなのだ。 その年、規定の年齢……十五になった男が一人、連れてこられた。名を、レン・ジングウジという。 ふてくされた表情で、ポケットに手を突っ込んだ少年は、剣を下賜されるときすら口を開かなかった。 去り際、彼はようやく一言呟く。 「死んでしまえ」 |