「つらく、ないもん……」


パパも、ママも、ころされた。私の目の前で……そして私もころされるはずだった。だけど、とっさのところで、ママのまほーで、私は知らないばしょに、とばされた。最後に見えたのは、優しいママの笑顔。パパの声。


『生きなさい、なまえ』


そう言われたから、私はつらくない。とばされたのは、アグナパレスとは正反対のばしょ。ここはさむい。白い。白い何かがたえることなくふってくる。さわると冷たいし、私は袖の短い服だから、ここにいるだけで凍えてしまいそうだ。


「ママ……。パパ…………」

「……おい、お前」

「……だれ?」


頭が痛くなって、倒れそうになったとき、誰かに脇の下を持ち上げられた。目の前にいるのは、白い服をきた、つめたい肌の人。


「誰と問いたいのは俺のほうだ。お前、こんな場所で何をしている。それに、半袖だと?お前は死にたいのか」

「しにたく、ない。でも、かえるばしょ、ない」

「……お前、アグナの…」

「私は、しにたくないよぉ…」


うるっと目から涙が落ちそうだった。だけど、泣いてどうにかなることじゃない。そうおもってひっしに涙をこらえる。変な顔になった。


「…王位争いか。ふ、どこの国もこれに関しては醜いものだな。おいお前、うちにくるか」

「…いく」

「働けよ。使えない人間はいらないからな」

「わかりました」


働くってのは、イマイチわからない。私のまわりには、いろいろなことを手伝ってくれる人がいたから。でも、そうしないと私はしぬ。いやだ、私は国に帰るまで……あいつにふくしゅうするまで、しぬわけにはいかない。


「いい目をしているな……。行くぞ、ついてこい」

「は、い」



こうして私は、かみゅさんという人の家におせわになった。ただ気になるのは、国に残してきた幼なじみの男の子である……。






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