うしろのしょうめん、だーぁれ。
「…………」
くすくす。みえないよね?みえないよね。こわい?
「………」
そう、うしろのしょうめんって、かがみを、つかわないと、みえなくて、
「カミュ様ー」
「なんだ」
「あの声、また聞こえるんですけど。浄化してくれたんじゃなかったんすか」
「何?俺の力を疑うというのか」
「疑うどころか、聞こえるんですよ。後ろの正面だー……むぐっ!?」
カミュに異議申し立てをしていたら、突然口元に、手のひらが飛んできた。バチンという痛い音が響く。何するんですか、という視線を向ければ、冷たい目で睨まれた。
「全てを言うな。引き込まれるぞ」
「んなっ!?」」
「そうだな…どうしても消して欲しいか」
「そ、りゃ。もちろんですよ。カミュ様」
ふてくされたように言ってみると、カミュは非常に不本意そうな顔になった。小さなため息を漏らす。なんだよ、前はあっさりと私を救い出してくれたのに、釣った魚に餌はやらん方式ですか…。
あんまりだ、と抗議しようと口を開けば、カミュは私をぐいと引き寄せる。そして突然顔を寄せてきた。数秒後、唇に何かが触れる。
「!?」
さらに、何かを吸い出すような仕草をした。あまりにも急な出来事に、カミュが離れてもがくりと地面に尻餅をついたまま、何も言えなかった。ガクガクと後ろで支える腕が震える。
「ふん……消えろ」
どこからかステッキ(?)を取り出してそれをひとふりするカミュ。すると、頭の中でもんのすごい断末魔が聞こえて、私の口から黒い霧が出て行く。
「……え、ええ……」
「その手のやつは、一度本体を引きずり出す必要があるのだ。……他意はない。忘れろ」
「んなっ………と、突然乙女の唇奪っといて、よくそんなことが言えますね!?」
尻餅して、全身は震え、顔はおそらく真っ赤だろう。そんな状態でカミュを睨んでも大した威力はない。もちろん鼻で笑われた。
「お前の全ては俺のものだ。誓った言葉を忘れたか」
「……いえ」
「ならば、行くぞ。次はシルクパレスに移動する」
「さっむ!なにそこ、絶対寒いっすよね!?」
「文句があるならとり憑かせて放置していくぞ」
「すみません今行きます!!!」
私は立ち上がると、スタスタ進んでしまうカミュを追いかけた。くそ…何なんだ、あの人は。
(……愉快なやつだ。あんな嘘を信じるとは)
(絶対憑かれてやるもんか…!!!)
――――
生意気な夢主にカミュ様からの制裁。
え、確信犯…?
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