「えっへへー」


楽しそうにスキップする音也を尻目に、私は本のページをめくった。二人で歩きながら、彼は鼻歌、私は歩き読書、という異様な光景を演出している。あと数ページで読み終わるので今日は一緒に帰りつつもやりたいことをやってる……みたいな。いつもは違うよ、いろいろな話を一緒にしたり、歌を歌ったりしてるんだよ。


「ふんふーん……ふんふー」

「……」

「……ねぇー」


甘えた声を出す音也をちらりと覗くと、まさかのばっちり視線があった。慌ててそらそうとすると、待って!と叫ぶ。


「ちょっとは、構って欲しいなぁ……なんて」

「ち、ちょっと待って…?」

「やだー!一緒に話したいー」


むー、とふくれっ面になった音也に、申し訳ないと思ったけど、どうしてもこのラストが気になってしまうのです。あとちょっと。とだけ言いまた小説に目を落とした。隣で文句が聞こえるが、無視、無視。あとで構ってあげるから。


しばらくそうやって歩いてると、いつもの曲がり角で音也が曲がろうとしなかった。それとなく直進に誘導される。あれ、と思っていたが結局小説に。


「…あー!なるほどっ、解決すっきり」


小説を閉じてカバンにしまうと、待ってました!とばかりに音也が寄り添ってきた。ぎゅっと手を取られる。あっという間に恋人つなぎにされ、確かめるように力を込められる。

私も静かに手に力を込めた。音也の顔がにへらと緩む。


「えへ。大好き」

「私も」

「ねえ、言葉で言ってよ。君の言葉で聞きたい」

「…す、好き」

「よくできました」


ぐいと腕をひかれ頬にキスされた。ぺろ、と舐められて唇が離れる。


「……もう。道端でするなよ」

「だって好きだって伝えたかったから!……嫌だった?」

「いや、じゃない」

「ならいいよねっ」


音也スマイルに当てられて、ふいとそっぽを向く。景色に見覚えがないことに気づき、えっ、と声を上げると音也が頬をつついてくる。


「たくさん、一緒に居たかったから。ちょっと遠回りしちゃった。ごめんね?」

「はぁ、あなたって人は……。そういうところが好きだよ」

「!!」

「好きって言って欲しかったのでしょ」

「う、うん!」


たまには遠回りも悪くないと思った。








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