「なまえさんにも我慢の限界ってのがあるんだからね…!」


猛烈に怒っている私は、怒りの矛先を壁に向けた。あのクソ猫…もといセシル愛島は、なんということだろうか、私のお菓子を持って行ってしまったのだ。これには温厚な私も激怒、急遽フリータイムを利用してやつの捜索なぅ。


「……いたっ!セシルてんめぇこんにゃろー!」


いつもの場所、つまり木陰のベンチで人の姿のまま、ぐーすかと眠っていやがりました。額に強烈なデコピンでもかましてやろうか、と思いながらこっそりと近寄っていく。セシルの目の前に立つが、まだ気づかない。

このバカ猫が…………。頬に髭かいてやろうか!


「…ん……あぁ、なまえ……」

「ちっ、起きたか」

「な、なんですかその手の紐は…!」

「いや、ちょっと縛ろうと思って」

「縛る!?なまえは特殊なセイヘキの持ち主なのですね…」

「ちっがーう!」


セシルの額に強烈なデコピンを食らわす。


「なめんなよこの餓鬼やぁ……私のお菓子たべたろう!」

「ああ、あのチョコレート…美味しかったですネ」

「美味しいに決まっているだろっ、私の、私の…レンからもらったチョコレートぉおおおおお!」


レンがわざわざ外国から取り寄せた、なんだか高そうなチョコレートだったのに…。わたしのために取り寄せてくれた。


「…レンから?もらった?…アナタだけ?」

「え、うーん、わかんないけどー…ええっと、」


あたふたとしていると、突然セシルが腰のあたりをぐいと引っ張ってきた。倒れそうになってセシルの肩に手をつく。


「ちょ、何をやってんすか」

「なんか…今、レンのこと無性にイライラ…」

「……ああ、嫉妬?」

「しっと?……そうかも、しれません」


むぅー、と頬を膨らませたセシル。が、可愛いけれど、そんなんでチョコの恨みは消えはしません。


「なまえ、怒って、る?」

「ああ、怒ってるとも!」

「どうしたら、許してくれる…?」

「許したくはないですけどね。だって私のチョコレート」

「…おすそわけ、です」


セシルに引っ張られた。そして突然口を塞がれる。なぜか若干チョコの味がして、それとなくムカついてくる。くそう、意外と美味しいじゃないか。それなのに食べきれなかった私の恨み。


「ゆるして、ください……」

「……」

「怒ってるなまえを見るの、辛いです」

「…わかった!わかったよ、許すから」


にぱっと笑ったセシルを見て、なんだかんだいって、私はこの猫に甘いのか、と思う。


まぁ、もちろんしっかりと後日、マカロン買ってもらいましたけどね!


(やぁレディ。前にセシルに食べられた、と嘆いていたチョコレート)
(おわっほー!マジ!?ありがとレン!あんた最っ高!)
(喜んでもらえて嬉しいよ。お礼はキスでいいかな)
(セシルの投げキッスを提供しよう!)
(ふふ、遠慮するよ)














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