「人殺し!あなたなんて、人殺しよっ!」
「ちが、う……違うよ私じゃないわ」
「あなたが殺したようなもんでしょう」
「違うっていってる。そんな、私じゃない。ねぇ、お、とや、助けて」
「…お前、そんなヤツだったのかよ」
「ち、が……」
両頬を、涙が伝った。予知夢を見た、人が死ぬ夢だった。友達のお父さんだった。たしか、帰り道に車に撥ねられて死んだ。
私はそれを不思議に思って、その友達に話した。友達は笑い飛ばして、私もその時は、そうだよねーと笑って流した。
でも、それから一週間して友達のお父さんは死んだ。
幼いって、残酷だ。私が予知夢を見たから死んだのだとみんな言う。これなら話さなければよかった。それから私は人と関わらず生きてきた。
高校は、両親のすすめで、彼らの母校である音楽学校を受験。みごと受かった。早乙女学園という。なかなか綺麗で大きな校舎だ。寮生活らしいので親から離れての暮らしだ。ちょっと不安はあったが、まぁ、やってけるだろう。
入学式、思いもよらぬ人物と出会った。
「……君、もしかして……なまえ」
「おと、や…くん」
あの時、数少ない私の過去を知る人物。一瞬にして、描いていたバラ色学園生活の構造がちった気がした。くそったれ、と毒づいてしまった。気にしない方向性で行こう。
「っ、ごめん!」
私はとりあえず逃げた。しかし、まさかの机につまづいて倒れてしまった。くそう、と涙の浮かぶ目をこすっていると、音也が笑いながら近寄ってきて、私の手を握り引き起こした。その目には、あの時見た、憎悪はなかった。
「あの……あの時はホントごめん。皆に引きずられるまま、君のこと人殺しなんて言っちゃって」
「……事実だったのかもしれないから」
「…まだあの夢、見るの?」
「もし、見るって言ったらどうするの」
「き、君の支えになりたい…な、な、なーんて、……あは」
微妙な顔でぎこちなく音也は笑う。
「……ばっかじゃないの」
「あ、や、やっぱそうかなー……?」
「別に、許してやらなくともない」
「ホント!?」
「ただ、」
条件として、私の相談役になるならな。
投げやりに言うと、犬っころのように昔と変わらない笑みで何度も頷いた。
――――
悪夢ちゃん見てなんか書きたかった。
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