「へいゆー!みーといっしょにがくしょくへとぅげざーしようではないか!」
「おだまりなさい」
「へぶぅっ!!……っ〜〜〜〜!トキヤっ、かりにも女子に向かって本投げちゃだめでしょ!」
「そうでしたね、本に失礼です」
「わ、た、し、に失礼なのよっ!ほらボチノセ、行くぞ学食!」
私はやつの首根っこを掴むと、クラスの視線をものともせずに学食へ連れ出した。まぁ、クラスのやつらはこんなことに慣れきってるから、生温かい目で見守ってくれてるんだけどね。
やつは学食でいつも野菜中心の食事を頼む。私も自然とそれに合わせるようになって健康的になってきた今日この頃。一緒に食事をしながら晩御飯について話す時間が至福の時間なのである。え、おかしいって?うん知ってる。
「ところで、トキヤ」
「なんでしょう」
「私たち、幼馴染よね?」
「そうですが」
「え、うそん。そうなのボチノセ」
「ちょっ、………なまえ、それはないでしょう」
「えへへ」
トキヤとこうしてくだらない会話をして、笑い合う。ああ幸せだ。
本当は今、ちょっとトキヤに幼馴染とは違う感情を抱き始めてることに気づいたんだ。だけど、それを認めたくなくて。あれは幼馴染で、それ以外の何者でもないんだって。幼馴染でいる間はこうしてトキヤを独り占めできることに気づいて。
ちょっとずるいけど、これが一番いい。
「ねぇトキヤ。私のこと好きかい?」
「ええまぁ。というか、それを何度きくんです?」
「何度でも。私が飽きるまで。トキヤが好きな人見つけるまで」
「おや、気は使えるらしいですね」
「しめるぞ、おい」
だから私は、自分の気持ちに気づかないふりをしたくて。
ぎこちなく笑うと。
「トキヤ」
「はい」
「可能な限り、一緒にいようね」
「なまえらしいですね。その言い方」
「守れないことは、言いたくないからね」
この至福の時間を十分に楽しもうとジュースをすするのであった。
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