次の日の朝、目を覚ますと皆を起こさないように今日の分の宿題を終わらせた。今日の朝食はフレンチトーストです。ただの私のお気に入り。 丁度最後の塊を焼き終わったところで、六人が二階から降りてきた。滑り台は一十木…とと、音也くんや翔くん、なっちゃんに好評のようで、いやっほーい!と叫びながら降りてくる。勢い着きすぎてもクッションがあるから怪我はしない。他三名はいたって普通に降りてきた。 使ってくれてもいいのに。そしてその姿をカメラに…いや、なんでもないです。 「ほい、朝飯できてるよ!」 「お、うまそー!」 いつものように何気ない会話をしながら食事を終えると、六人は早々に二階へと上がっていった。なんでも準備があるそうで。やっぱり声出しとか音あわせとか必要なのかな。でも楽器とか音源ないのにどうするつもりなんだろう……。あ、アカペラか。 きゅ、と蛇口をひねり湯気が出る手を拭きながら部屋に戻った。 「入ってもいいですかー」 「ああ、大丈夫だ」 ノックの後、真斗くんの声が聴こえて私は扉を開いた。机の上に立った彼らはなんかキラキラと輝いて見える。まだ歌う前なのに…雰囲気から入るタイプなのかな、心地よいピリピリ加減。 「で、どうする?アカペラで歌おっかな」 「あー、それなら僕、あの人からCDもらってますよー」 「なんでっ!?」 「なんか、渡されちゃいました。多分必要になるだろうって」 音也くんとなっちゃんがお話ししてる間に、受け取ったCDをプレイヤーにつっこむ翔くん。もちろん私が貸したやつです。 「うわ、どんだけ入ってるんだよ…」 「そんなに?」 「ソロとユニットとグループの、」 「ちょ、なにそれ楽しみすぎるんですけど」 「じゃあ、ハイハイ!一番は俺!」 音也くんが元気よく手を上げる。それにトキヤくんが眉根を寄せてなにやら言い出しそうだったけど私を見てそれを止めた。え、何気を使わせちゃった感じですか。 「よーし!やるぞっ!!」 ばーん!と手を上に伸ばした音也くん。元気があっていいなぁ。と思ってすすめられた椅子に座って待機。と、突然音也くんの手の先に赤のギターが出現した。 「は!?」 「えっ!?」 私だけではなく、皆も驚いた表情で音也くんのギターを凝視している。本人もよくわかってないらしく、あれなんで俺のギター、なんて呟いている。 「ま、いっか!それなら弾きながら歌えるね。だったらこれかな」 すっ、と深呼吸して最高の笑顔を浮かべる。 「聞いてください、"虹色☆OVER DRIVE!"」 歌いだすと同時に現れたマイクにはもうツッコミを入れない。…入れる間もなく、音也くんの歌に引きずり込まれた。ギターのテクニックもさることながら、歌いだしの感じ、それからだんだんサビに行くにつれての盛り上がり……歌詞も音也くんらしい、元気あふれるものだなぁ。 (CDのサポートなんていらないんじゃないかな、それくらいすごいっ!ギターと歌だけでも十分に引き込めるよ!) 「ふぅ、聞いてくれてありがとうっ!」 「……………はっ!?すっ、すっごいよ音也くん!歌の世界に入り込んでた。じぃんとする曲だね。音也くんらしくてカッコイイしい、楽しい!」 パチパチパチ、と手が痛いくらいの拍手とともに、音也くんにこの感動を伝えようとした。ギターとマイクが消えた後、音也くんはニカッと笑ってもう一度ありがとうと言う。 「では、次は俺だな」 真斗くんが前に出て曲名を告げる。 「"Knocking on the mind"だ。聞いてくれ」 グランドピアノがドンと出てきてマイクも用意される。真斗くんはピアノだけで歌うらしく、CDは今回はお休み。 出だしの優しい音、それに、ふわりと歌が入ってきた。歌詞や雰囲気がそのまんま真斗くんを表現しているようで、まさに、真斗くんの歌と言えるものだった。 しっとりめの曲で、そこからチラチラと見える力強さ、なんだろう格好いい…。 「かっこよかった!弾き語りって難しいでしょ、なのにこう、むしろ楽しんでるようでさ。ピアノの音も優しくて素敵だった」 「そうか、ありがとう。その言葉がとても嬉しい」 「じゃあ次は僕ですね!うーん、それじゃあ"サザンクロス恋唄"を歌いますっ。ヴィオラは今回はお休みですね」 ふふっ、と笑ってマイクを手に取るなっちゃん。でも、CDから音楽が流れ出すとすっと真剣な表情になった。 なっちゃんの曲……もっとふわふわした曲かと思ったのにイントロから格好よさが滲み出ていて……。 (うそっ、これが……あのなっちゃん!?) ゆるふわ系なあのなっちゃんからは想像もつかないほどの格好いい曲。今はなっちゃんっていうか、那月くん、って感じ。星とか月とかの歌詞だけど、空が好きなのかな、那月くんは。ロマンチストなのかも。作詞が彼とは限らないけど、きっと那月くんを良く知ってる人が書いてくれたのかな? しかもすっごく情熱的な歌詞。英語の発音なんて格好よすぎてどうしよう、心臓バクバクしてきた。 「どうでしたか?僕の歌は」 「すっっっっっっごいやばい!なっちゃん、じゃなくて那月くんっ、って感じだった!普段とのギャップに驚いちゃったなぁ……」 「えへへ」 「じゃあ次は俺」 レンくんが前に立つと、ウインクを一つ。気障なところもきっと彼のキャラなんだろうな。 「歌うのは"世界の果てまでBelieve Heart"レディの為だけに歌うよ」 「ノッカーウ☆のあれか」 「うるさいよおチビちゃん」 「ノッカーウ?」 「コホン、レディは気にしなくても大丈夫さ」 翔くんのチャチャにぷいとそっぽを向くと、マイクを手に取る。 「サックスでも君を魅了したいんだけど、それはまた今度ね。今日は歌で虜にしてみせるよ」 うぅ、歌う前から頬が赤くなる……。パタパタ頬を冷やしながら曲を聞いた。レンくんの歌い方は、なんていうか…その、爽やかとは正反対というか、フェロモンがすごいです。息継ぎにまでこう、色気が含まれて言うというか トランペット……じゃなかった、サックス、なのかな、CD音源だけどすっごい上手くて、それが後で本人が演奏したやつだと聞いた時には本気で驚いた。 「どうだい時雨?俺の歌は」 「色気が半端ないと思いました」 「そう?なんならもっと愛を囁こうか?二人きりの場所で、さ……」 「っ〜〜〜〜!!レンくん!冗談でもそんなこと言わないのっ!」 「次は俺だ、ゆーわくしてないでどいてろよっ」 「ムキになるなって、おチビちゃん」 はっはっは、と笑いながらレンくんは翔くんに場所を譲った。翔くんはこちらに向かってブイサインをすると出てきたマイクをパシッとキャッチ。 「歌うのは"オレサマ愛歌"ヴァイオリンは今回はお休みな。弾きながら歌うのは無理だし。那月っ!ミュージックスタート!」 「はーい翔ちゃん」 ぽちっ、とプレイヤーを押すと軽やかな音楽が聞こえてくる。これは誰の曲か教えられてなくても翔くん、と言えるだろうな。だってこんな可愛い曲が似合うのは翔くんくらいだもん。 歌詞も結構ストレートで、でも男らしい強さがあって……。こんな風に愛を歌ってもらえる女の子はきっと幸せだろうな。 「しょっ、翔くんすごいよっ!!なんだろ、そんな風に思ってもらえる女の子って幸せだね!って思った」 「そ、そうか?」 「きゃー抱きしめてー」 「ばっ!!そんなこと軽々しく言うなよっ!」 翔くんをからかっているとトキヤくんがすでにマイクをもって構えていることに気がついた。最後はトキヤくんか、いったいどんな歌を歌うんだろう。 「"星屑☆Shall we dance?"」 曲名だけを告げ、歌いだす。私はいつものトーンからして低めかその地声あたりの声で歌ってくるかと思ったらすっと高くなって。でもそれが違和感なくて…。 上手いか下手かで言えば、怖いくらい上手かった。トキヤくんのキャラというか、色というか、それにカッチリはまっていて、また感情表現も上手。流石アイドルだなーって思える感じだった。 「上手だね、上手だよとても」 「ありがとうございます」 「なんていうかね……あれだ」 想いが溢れ出しそうな歌だった気がする。 「よぅし!それじゃあ最後は未来地図でしめよう!」 「いいなそれ。よし準備!」 六人並んで歌ってくれたそれは、すっごい優しい曲で……。子守唄みたいで…。 聞いてると優しい気持ちになれて、不思議と眠気が襲ってくる。寝てはいけない、と思って頑張っていたけど…結局、気が付けば私は眠っていた。 「……疲れてたのかな」 「私たちのせいで仕事量も増えてるでしょうしね」 「安心しきった寝顔だねぇ。俺がこんなに小さくなかったら放っておかないのに」 「いつもすまないな。助かっているぞ」 「寝顔も可愛いなぁ。ねー翔ちゃん」 「なななっ、なんで俺に振るんだよっ!」 起きたらとっくに昼は過ぎていて、皆に謝りながら遅れ気味の昼食を作ることになりましたとさ。 そうそう、今日の夜からおばが帰ってくるので明日からしばらくはコンビニ弁当で我慢してもらうしかないですね。あーでも結構彼女も出かけるから大丈夫かも。 ―――――――――――― 生で歌ってもらいたいという願望からこうなりました。 マイクでたり楽器でたりといろいろファンタジーだけど深くは気にしないでください。シャイニングさんの影響なんです、彼は偉大なんでs(ry 12.04.09 |