私の朝は戦争だ。

目覚ましが鳴る前に起きて解除すると一階に降りて朝食を作る。それを急いで食べると部屋に戻ってパジャマから着替えて髪を整える。ここまでで時間は六時ジャスト。次に洗濯物を干して昨夜のうちに準備してある、教科書詰め込んだ鞄を手に取るとバスに間に合わないと叫びつつ登校。一本しかないから乗り遅れると走るしかない。結局遅刻という切ない式が成り立つのです。

しかぁし!一昨日から冬休みな私はこれから二週間程度はゆっく〜りと出来るのです。余裕をもって朝起きれます。久々に聞く目覚ましの音にじぃんと感動しながら止めようと机に手を伸ばし…そして固まった。

「夢じゃなかったのね……あれは」

そう、一十木くん用に引っ張り出してきたちびちゃんハウスに、手のひらサイズのちびっこ達が雑魚寝をしていたのです。

「……ふふっ、可愛い」

一応かけるものを探してひっかけてあげたけど、寒くなかったのかな、大丈夫かな。

「…サイズ的にはPSPサイズかしらね」

「んぅ……」

「あ、起きた」

最初に目をこすりながら身体を起こしたのは、黒?紫?そんな感じの子。小さな声でおはようと言うとクールに返してくれた。

「喉大丈夫?水用意してあるけど」

冬…に限らず喉を痛めるのが嫌いな私は朝起きたらそばの水筒から水を飲むようにしている。なにか通さないとイガイガして気持ち悪いからね。

「おや、ありがとうございます、いただいてもいいですか」

「もちろんですです。ええと、コップ」

水筒からコップに水を移すと紫くんのそばに置いた。サイズは大丈夫かな、と昨日の一十木くんの様子を見ていても心配してしまう。あれが出来るのが一十木くんだけだったら……。

「あの」

「はい?」

「耳、塞いでいてくれると助かるのですが……」

「……ふっ、わっ、わかった」

つまり、彼は照れ屋さんなようだ。耳を塞いであげるとコップが小さくなるのが見えた。飲み始めたあたりで手を外す。どうしようすっごく可愛い。小さい子可愛いなぁ……。

「ねね、紫くん」

「……一ノ瀬トキヤ」

「お名前?ご丁寧にどうも。私は薄氷時雨です。お好きに呼んで。それで一ノ瀬くん」

「なんでしょうか」

「朝ごはん、何がいい?」

にこー、と笑いかけるとちょっと驚いた顔をされた。その後すぐ、そうか。となにかぶつぶつと呟く。

「野菜があればそれでいいです」

「サラダ!了解ですっ」

用意してくるねー、と階段を降りかけた私は、ひょいと扉から顔を出した。

「皆を適当な頃に起こしておいてくれると助かります」

「わかりました」

「お願いしまーす」

今度こそ、と階段を降りてエプロンを取った。昔に家庭科の時間で作った水色のエプロンをいまだに愛用中の私でございます。はは。

キャベツとかきゅうりとか適当に刻んでさらに添える。今までは一人分だけだったから、七人分作るとなると結構大変な作業になるんだね……。

今が冬休みでよかった、と心から思いながら目玉焼きとベーコン焼いて、お茶碗にご飯をよそった。食器が足りない…。あとで100円ショップで揃えてこよう。コップは足りるんだけどなぁ……。

「あ、定食皿があった」

私はこれでいいや、と一枚の皿が数箇所に仕切られた食器を取り出してがさがさとついだ。みんなのは勿論丁寧に。ある程度の時間がたって、朝食が完成した。ふん!と満足げに胸をそらしてから、エプロンを外して二階に上がる。

「朝ごはんつくりましたよー」

扉を開けると、丁度一十木くんがあくびをしながら目を覚ましたところだった。隣には腕組みをして若干疲れた表情の紫くん、っと、一ノ瀬くんが見える。なんとなくわかる図。彼はねぼすけさんなのか。

「……夢じゃなかったのかよ」

「あれデジャヴ」

帽子の子が呟いた一言に私が軽く反応した。おりましょうか、とお盆に六人を乗せると下に降りた。彼ら一人じゃ下に降りれないこの状態をどうにかしないとな…。

机だけは無駄に広いもので、七人など普通に入った。うち六人は手乗りサイズですがね。

「サイズが大きいな……」

「大丈夫だよマサ!こうやって小さくなーれっていうと俺らサイズに変わるんだ!」

「それは本当か!よし、試してみよう」

「小さくなぁれ〜!」

青、黄、赤…おう信号機。その三人は楽しそうに会話しながら作った朝食をもぐもぐと頬張っていた。ううん、彼らサイズの食器がありそうっちゃありそうなんだけど、この光景が見れなくなるのは残念だからあえて買わないでおこうかな。お金もかかるしねぇ……。現実見てますから…はぃ。

まぁ私は、本以外に出費はないから、小遣いで足りるかな。食費はなんか理不尽な気もするけど。ひどく理不尽だけど!理不尽すぎて泣きそうだけどもさ!!

「「「ごちそーさまっ!」」」

「おそまつさまっ!!」

……この笑顔見れたらそれでいいかもしれないわ。そこ、ほだされやすいとか言うな。

「そうだ、まだ名前知らないよね。私は薄氷時雨。いつまで居るのかわからないけど、こんな家でよければ滞在してあげてね。よろしく」

食事のあと、みんなでお茶を飲んでのんびりしてると、自己紹介がまだなことに気づいてみんなに挨拶をした。あ、とみんなが声を上げる。

「はいはい!俺は来栖翔!」

帽子の子が元気よく手を上げて名乗る。すると次々に名前があがった。

赤が一十木音也くん、青が聖川真斗くん、黄が四ノ宮那月くん、紫が一ノ瀬トキヤくん、帽子っ子が来栖翔くん、オレンジが神宮寺レンくん。よし、覚えました!

「そういえば俺たち、いつまでいるんだろう」

「どうやら、私たちは二週間ほど、こちらでお世話になるようですね」

一ノ瀬くんが携帯を取り出していじったかと思うと、一十木くんの疑問にため息混じりにそう答えた。

「早乙女さんがそういう内容のメールを送ってきています。こちらでは圏外ですし、使えませんがね」

「あぁ、本当だね。困ったな…」

「二週間くらい余裕で面倒見れるし、いいんじゃない。居てよ」

「しかしだな…」

「気にしないで、ええと、聖川くん。私ほら、実質一人暮らしでちょっとさみしいなって思ってたの」

へへっ、と笑うと聖川くんの表情が強ばった。

「それは…………すまなかった」

「気にしないで。その話題は忘れてくれると嬉しいな。さてさて、そうと決まれば机の上を大改造しないとねっ!」

早々に話題を切り上げて、私は立ち上がった。ベッドは作れないけど、布団くらいならあまってる布を縫って、綿を詰めればそれなりのものができる。

「綿…綿、多分家にある、布もあるね。色分けしたほうがいいかな。裁縫道具を探さないと」

「縫い物か?ならば俺も手伝おう」

なんと聖川くんが縫い物の手伝いに名乗りをあげた。これは助かる、ということで一つ、お願いするとしよう。

階段については、皆ちょうどいいトレーニングになるとか言って、自力でのぼるらしい。彼らはいったい何なのだろうか。パッと見高校生というか、まぁそこらへんの年だなぁ。部活動とか?

……いつか聞こう。

くだりは手すりに工夫をして滑り台みたいにしてみよう。小学校の頃の工作授業は無駄ではなかったのだと、しみじみ思う。

とにかく、今は寝る場所確保に専念、かな。都合良くある布と綿を手に、自分のベッドに座った。私の机までは皆、段差を利用して行ったり来たりしてるからここには手は加えなくていいだろう。皆器用だなぁ。

お盆の上に聖川くんを乗せて隣に置く。私と聖川くんが布団を作る間に他の五人にはハウスと机周りの整理を頼んだ。

一十木くんや来栖くんの元気な声を聞きながら、私が綿をつめ聖川くんが縫う、という流れ作業。

「こういうのってワクワクするよね」

「そうだな。こうもくつろげる日はいつぶりだろうか」

「そんなに忙しいの?」

「まぁ…………そうだな」

「大変だね。私と皆似たような年なんでしょ?身体壊さないようにね!ここに居る間だけでもゆっくりして貰えるように私頑張るから」

ぐっと拳を握りしめると、聖川くんは優しく笑った。

「お前も無理はしないでいいのだぞ」

「ふふっ、りょーかい…………っと、これで最後だね」

ほい、と渡した布団をささっと縫い終えると意外とうまく出来た布団のセットにガッツポーズを作った。なんだかわからないけど、ここにいる間だけでも楽しんでくれるといいな。身体小さいと不便だし、私ができるだけサポートしよう。

「………あっ!」

「どうかしたか!?」

「……今日のご飯、つくるの忘れてた。何か買ってくるね!ゆっくりしてて!」

時計を見ると、いつもならば昼食を食べている時間。冷蔵庫がからっぽだったことを思い出し、慌ててサイフの入った鞄を掴むと手ぐしで髪を梳かした。

「ごめんっ、これからお昼買ってくる。ついでに夕食の買い物もしてくるわ!すぐもどる」

皆に謝ってから私は走り出した。近所のスーパーで、野菜を買いだめ。それと、おにぎりをいくつか。今日の夜は…

「あ、お寿司が今日安い。これにしよう。お吸い物をつけて、そんなメニューでいいかな」

うむ、と頷き、ぽいぽい買い物かごに入れていく。買ってからハッとした。

(魚嫌いな子いたらごめん!)


……どうにか魚が嫌いという子はおらず、ホッとして後の時間を過ごした。彼らの風呂は洗面器にお湯はってタオルを渡す。小さな小分けされたケースにシャンプー、リンス、ボディーソープを突っ込んどいたからまず問題ないだろう。一緒に入るなんてことは流石にしないからね!あとは各自工夫してくれることだろう。

服の洗濯は私がやると言ったのだが、全員に断固拒否された。傷つく、と思っていたら、これくらいは自分たちでやりたい、私の負担を減らしたい。という考えがあってのことらしい。なんてかわいい子たちだろう。全員を抱きしめてしまった。

――――――――――――
な、長い……orz
大丈夫、つ、次から短く…できぬかも。
でも1日ずつ進めて行く予定だから分けるのめんdゲフン難しいし……。
うん、あまりにも長くなったら上・下でわけるかもね。
12.04.03



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