朝、目が覚めたら……。

「おっはよー!今日はいい天気だよっ、俺、外出たいなぁ…」

小さな赤髪君がおりましたとさ。



「これは夢なの私の願望なのこんな非現実的なことがあっていいの!?」

「ん?」

「いいい、いえ何でもないです!えと、君は…」

「そうだった!自己紹介がまだだったね。俺は一十木音也!今日からしばらくお世話になります!」

「へ?あ、わわ、私は薄氷時雨です……よろしく…です?」

一十木音也と名乗った……"手のりサイズの"男の子はちょこんと頭を下げた。この日から私の、どたばたな日々が始まるのです………。


私は深いことを特に考えない主義なので、なんの違和感もなくこの超常現象を受け入れることができました。夢なら夢でよし、神様からのプレゼントならありがたくしばしの楽園を満喫させていただきます。

一十木音也と名乗った彼は友達がきゃーきゃー言ってるゲームのキャラに似てたけど、そこまで踏み込むといよいよ困ったことになりそうなのであえて突っ込みはせず。丁度今日から冬休みなもんで、高校生にしてほぼ一人暮らしの私はこの楽園に浸らせてもらうわ。

「ええと……ご飯とかホントどうしよう。カップ大きすぎるよね……人形用だと小さすぎるし」

「それなら大丈夫!」

「へ?」

「俺がこうやって触れて…」

一十木くんが紅茶を入れたカップにちょこんと触れて、小さくなーれ!だなんて可愛く言うとカップが一十木くんサイズに小さくなった。

「ふ、不思議なこともあるのね…」

「元に戻すこともできるから安心してね」

「ふふっ、了解!」

流石にテーブルとか椅子とかは小さく出来ないので、辞書の上に小さなケースを置いて机がわりにしてもらった。近いうちに人形用のものでも買いに行こうかしら。

小さな子供が出来たみたいで嬉しくなった。ふんふんと鼻歌を歌いながら食器を洗っていると、一十木くんが足元に駆け寄ってきて一緒に歌いだす。それのまぁ、なんと楽しそうに歌うこと。私は一十木くんを手に乗せて上まで持ち上げると、濡れないようにふきんを敷いてその上に座らせてあげた。

「へへっ、近くなった」

「そだね。歌、好きなの?」

「うん、大好き!ギターも得意だよ」

「そうなんだっ、格好いいね!」

「照れるなぁ。ありがとっ」

「いえいえ、こちらこそ癒しをありがとうございます。さ、洗い終わったから部屋に行こうか」

一十木くんを両手で持ち上げると階段をゆっくりとのぼった。部屋に行くと、机の上に一十木くんをおろす。

「ちびちゃんハウス…昔使ってた人形用の家なんだけど、ベッドとか使えないかな?」

「うわっ、すっごー…!いいの?これ使っても」

「いいよ。多分もう使わないし。内装も変えちゃおうか!リフォームリフォームっ」

「そんなことできるの!?」

「もっちろん。私に任せて。そうと決まれば材料を買いにいかないと。どんな部屋が好き?」

「それじゃあ…」

一十木くんの要求を聞き入れ、紙にメモしていく。どうしようさっきから熱心に紙を指さして指示する一十木くんが可愛すぎてあんまり集中できません。

「薄氷、聞いてる?」

「ああ、ごっ、ごめん!それでええと、こうかな?」

ああだこうだ、と構想を練っている間に、いつの間にか夕方になっていた。いけない、夕食の準備!と私が立ち上がると、一十木くんはちょっと寂しそうな顔をした。きっと今までの時間が楽しかったのかな。なんて、もしそうだったら嬉しすぎるという妄想をして笑った。今日のご飯はカレーライスです、だなんて言うと一十木くんはガッツポーズで喜んでいた。

ふむふむ、彼はカレーライスが好きなようだ。メモしておいてまた今度作ってあげよう。

「ごちそーさま!」

「お粗末様でした!さーて洗い物!」

「あ、俺も上行くっ」

はいはいっ、と元気よく手を上げる一十木くんに、仕方ないなぁと苦笑するとまた濡れないようにしいたふきんの上に座らせてあげた。カチャカチャと食器を洗ってる間、一十木くんはずっと歌っていてくれた。可愛いな、一十木くん。

そうこうしてるうちに10時を回り、私の寝る時間帯になってしまった。そういえば一十木くんの好きな料理って他にあるのだろうか。たしか本棚に料理のレシピ本があったような、と本棚に手を伸ばした、その瞬間

ドダバタタタッ

「わわっ!」

「大丈夫っ!?」

奇妙な音を立てて、頭の上に何かが降ってきた。しまった、本でも落としたかな。ハウスから身を乗り出して声をかける一十木くんに大丈夫の意味をこめて親指を立てると、落ちたであろう本たちを振り向いた。

「はぃい!?」

甲高い声が漏れる。違う、これは本じゃない…。

「いたた…まったく、着地くらいどーにかなんねぇのかよ」

「…あらら、増えちゃった」

呆然と呟く私の目の前には、いちにーさんしーご…五人の人間。みんなが一十木くんサイズである。

「翔!それに皆!?」

「知り合い!?」

「音也ぁあああああ!!お前もなのかぁああ!」

「……説明プリーズ」

一十木くんを加えれば六名様。もし彼らが一十木くんと同じような感じでやってきたのだったら、しばらくの間、そうとうな賑わいになりそうだ。

嬉しさからのため息と、これからの苦労を思ってのため息が同時に漏れた。



いやでも、なんで来たのかくらいの説明は欲しいですよ、ねぇ。


――――――――――――
はい、始まりましたうたプリ連載。
私はゲーム(repeat/music)程度の知識と雑誌の知識しかないので、若干違うキャラもでるかもしれません。極力調べますけどね。フリーダムにやらせていただきますけどね。
まずキャラ同士の呼び方からつまずいてるわたくしめでございますがどうぞお付き合いくださいませませ!
12.04.02



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