カレンダーを見て、ため息を一つ。皆の昼寝中、(まさかのトキヤくんもだ。うそトキヤくんが昼寝とか似合わない…なんて思ってません!すみません!)居間でせんべいをかじりながら冬明けテストの勉強をしていた。とりあえず日付でも書くか、とカレンダーを見るため顔を上げる。

(そっか、もうすぐ二週間経っちゃう……)

そう。彼らがこちらにやってきてからすでに一週間と半分以上が経過している状態だった。期限は二週間と言っていたから、今日か明日あたり、彼らは元の世界、場所?に戻ってしまうのだろう。

今までの騒々しさを考えると、やっぱり彼らと別れるのは寂しいと思う。これから先の、一人で食べる食事の味気なさを想像して、そして苦笑した。

今まではそれが普通だったのに、と、もう何枚目かになるせんべいに手を伸ばしながらペンを回した。別れるならせめて、お別れのセリフくらいは言わせてほしいなぁ。

「よし、今日は豪華な料理にしよう」

思い立ってから材料確認に走った。ふんふん、と鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開ける。

「みんなの好物は……よし、作る余裕あるね。食後はケーキでも買ってこようか。とっておきの紅茶を出そう!」

そうやって一人楽しく今日の予定を考えていると、ふいに二階から彼らに呼ばれたような気がした。

「なにー?呼んだー!?」

叫ぶように問いかけ階段まで行くと、小さな紙飛行機が飛んでくる。おおと、と慌てて受け止めると、開いてね。と小さな文字で書いてあった。

「えーなんのイタズラですか……しょうがないなぁ。なになに……」

それは、小さな彼らからのコンサートのお知らせでした。

3時に、二階の部屋に上がってきてください。そこでミニライブを開催します!

その文の下に、全員からのメッセージが一言ずつ添えられていた。時計を見ると2時50分。10分も待つのか。

私は一旦居間に戻り、勉強道具をダッシュで片付ける。せんべいを戸棚にしまい、何気につけていたテレビを切った。そしてそわそわしつつソファーで待機すること数分。ぼーん、と3時の鐘がなった。ばっと立ち上がって二階へと上がる。一歩一歩踏みしめる度、ドキドキと胸が高鳴るのがわかった。

ドアノブに手をかけ、深呼吸してから開く。

「わぁ……!!」

入ったそこは、見慣れた部屋ではなく、ライブ会場そのもののようだった。私の家具はなく、本格的なセット、客席、そしてステージ。明るく綺麗なライトがステージをキラキラと照らしていた。

本来なら、この異様、特殊すぎる状況に頭痛的なものがするはずなのだが、今日くらいはいいや、と持ち前の、深いことは気にしないという思考で乗り越えた。

「座って…いいのかな?」

適当な椅子に座ると、突然バシュッ!と煙?そんなものがステージから発生した。ビックリして硬直していると、ステージの端っこから六人が駆けてくる。それと同時に音楽が鳴り響いた。

曲はたしか、マジLOVE1000%とかいうのだったっけ?前に聞かせてもらった曲だ。衣装もステージ衣装となっていて、彼らが向こうでアイドルやってるときに着てる衣装かな。似合ってるな。と笑う。

ライブなんて初めて見たけど、なんだろう、この高揚感。たまに投げかけられるウインクや、振られる手にドキドキしていると、一曲目が終わる。

『今日は、ST☆RISHのライブに来てくれてありがとう!』

六人声を合わせてそう言った。

「これは、時雨のためだけに開くライブだよ!」

「今までの感謝の気持ちを伝えたい一心で、提案したものだ」

「大変でしたよぉ。サプライズのつもりだったので、バレないように練習や打ち合わせをするの」

「トキヤが昼寝するとか言ったときは冷や汗かいたぜ…。似合わなッ!みたいな?」

「翔!……まったく、他に言い訳がなかったのですから、しょうがないでしょう。ともかく、気後れせず楽しんでいってください」

「レディ一人に捧げる歌だよ。受け取って、俺らの気持ち」

『まずはAクラスの歌をどうぞ!』

翔くん、トキヤくん、レンくんの三人が一度下がり、Aクラスといった残り三人が前に出る。永遠のトライスター、だっけ。三人が楽しそうに歌いだした後ろで、Sクラ組はダンスをする。どうやらバックダンサーもつとめることができるらしい。アイドルすげぇ。

サビの軽快なステップと、鮮やかなパフォーマンスに目を奪われている間に、曲が終わった。続いてもう一曲。次はSクラ組と交代のようだ。

熱情セレナーデという、近々公開される新曲を歌ってくれるらしい。そんなレアなものを聞いてもいいのだろうか。それとなく居住いを正した。

それぞれのソロって言うんだっけ、それも格好いいんだけど、ハモりの部分があまりにも綺麗すぎて…。声も出ないくらいに感動した。

トキヤくんのいつもより高めの声に、低音のレンくんが重なって、それを中間の翔くんが上手くまとめあげている。この三人だからこそ出来る曲なんだ、と感心し、そして作曲者にも心の中で拍手をした。


それぞれのソロはなかったものの、二人ペアみたいなのの曲もあって、合計するとかなりの曲を歌ってもらっていた。ここまで休みといった休みを取らずに歌い続けることは簡単ではないだろうに。

(さすが、プロ)

「それじゃあ最後は未来地図でしめようか」

レンくんが指を鳴らしてカウントすると、曲が流れた。仕組みは深くは気にしない。

(あ、この曲知ってる!)

よく彼らが歌っていた曲なので、歌詞までは覚えていないがメロディ程度なら頭に入っている。小さく鼻歌程度に、一緒に歌わせてもらった。

曲が間奏に入った。と、そのとき皆がステージからいっせいに飛び降りる。

(は!?何事ッ)

動揺する私に、レンくんとトキヤくんが手を差しのべる。

「レディ、さぁ俺たちの手を取って」

「ステージにご案内、ですよ」

「え?あっ………うん!」

二人の手を取ると、ステージまで誘導される。身長が小さいからかがまないといけないけど、どうにかステージまではついた。そこで、誘導係二人が指を鳴らした。次の瞬間、私の体が小さくなる。

なんでもありだな…。中央に誘導されると、みんながワラワラと寄ってきた。

「ほんとーにありがと!今までの感謝を込めて……」

音也くんのセリフのあとに、真斗くんが指を鳴らすと、花束が出現する。もう突っ込まない。

『ST☆RISH一同、貴方に感謝を捧げます』

「っ………みん、なぁ…………。ばか、こんな風にされたら泣いちゃうでしょ!」

熱くなってきた目元をこすって、ふにゃりと笑顔を浮かべる。こんなに優しくされたら、本当に泣いてしまいそうだ。

すると、泣け泣けと茶化しが入るので、余計に泣きそうになる。

無駄にデカい花束を抱えながら、私は目元をこすり続けた。


いつの間にか曲は終わっていて、大切な時間が過ぎるのは早いな、とぼんやり思った。みんなは、私が顔を上げるまでそこで待っていてくれている。

私は、花束を持ち直すと顔を上げた。

「みんな、今日はありがとう。最高の思い出になりましたっ!その代わりと言っちゃなんだけど、今日の夕食は楽しみにしていてね。腕によりをかけて素晴らしい料理を作ってみせるから!食後にはケーキも用意してあげませう」

「マジで!?やっりぃ!!!」

「時雨、お前さいこー!」

「まぁまぁ褒めるなって。はっはっは………。それじゃあ、私は準備に入ろう!とりあえず君たちは休んでおくように!あんだけ歌ったんだから、疲れたでしょ?それじゃっ」

ステージから飛び降りると、ぶんぶん手を振りながら部屋…いや、ライブ会場を出た。扉を開けたら体が普通サイズに戻って、普通に廊下があるとか、なんかシュールなんだけど。

あはは、と苦笑しながら私はとりあえず花瓶を探しにかかるのだった。





(ででーん。みんなの大好物揃えてみました。食後には有名どころのケーキ用意してマス!)
(わぁ〜い。嬉しいですぅ〜)
(そーかそーかはっはっは!ほらトキヤくん、今日くらいカロリーがどうこう言ってないで食べちゃいなさい!私はそんなもの気にしたことないけどネ!太ってる言うな)
(誰もそんなこと言ってませんよ。貴方本当に女性ですか……)
(こら、レディにそんなこと言わないの)
(そ、その……時雨は普通に綺麗だと思うぞ)
(!!真斗くん愛してる(笑))
(俺、(笑)に悪意を感じる……)
(奇遇だな音也、俺もだ)
(うふふふふふ)


――――――――――――
終わりが近づいてきた……。
次で終わりかなぁ。

12.06.18



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